第1章 組織との出会い
『ボス……確かにあなたは私が守らなければならない方です。しかし……』
私は何度目かのため息をつき、部屋の中を見回して言った。
『……生憎ですが、私にはこの状況から、あなたを無事に助けることは不可能に近いです』
「何を言ってる、今までの状況と何が違うっ!」
『変わらないのは、あなたの命が狙われていることだけです』
「なっ……」
誰かが守ってくれる、 代わりはいくらでもいる。そうやって窮地を抜けてきた者が、理解できることではないのかもしれない。
『今までは護衛が複数人いて、且つ、すぐにあなたの安全を確保できる状況でした。彼らがいたから、あなたの命は守られていたんです。私がしていたのは、あくまで敵組織の抑圧です……あなたの命を守っていたのは私ではありません』
淡々と告げる内容に、目を見開いて固まるボスへ続ける。
『敵となる者が1人であれば、助けることができたかもしれません。しかし、複数人いる場合は1人始末できたところで、別の者が手を下してしまえばそれまでです。よって、既に2人から拳銃を向けられているあなたを助けることは不可能だと判断しました……ご理解いただけますか?』
今、ボスに拳銃を向けている男のどちらかを撃ったところで、その瞬間撃たれていない方は、ボスに向けて引き金を引くだろう。いくら、拳銃の扱いに慣れていたって、2人同時に始末するなどできるわけがない。
「それならっ……!お前のっ!命を差し出せっ!主人の為に死ねるなら本望だろっ!!」
「あら、それはできない相談ね」
取り乱しているボスの様子が可笑しいのか、女性は笑いを噛み殺すようにして言った。
「さっきまでの話聞いてなかったのかしら……この子は生きたまま連れて帰らないといけないのよ。そんな大事な子、殺すわけないじゃない」
「それならっ、私は見逃してくれっ、そいつをくれてやる、だから命はっ!」
薄ら笑いを浮かべて命乞いする姿は、何とも滑稽だ。
「それとも金かっ?金ならいくらでもある!好きなだけ持っていけばいい……!」
『ボス……』
「うるさいっ!お前は黙っていろっ!この役立たずがっ!あの女と同じだ!使えんクズめっ!」
『あの女……まさか』