第1章 組織との出会い
『……それはどういう意味でしょうか?』
話が急過ぎてわからない。
「そのままの意味よ。貴女に私達の組織の一員になって欲しいのよ」
女性は口角を上げながら嬉しそうに話す。
「ふっ、ふざけるなあ!!そんなことが許されると……」
「あんたの話は聞いちゃいねえんだ。黙ってて貰おうか」
サングラスの男は、ボスの額に拳銃を押し当てた。次、気に触ることがあれば、その引き金は引かれるだろう。
『何故、そういう話になるのか、教えていただけますか?』
「私達の上の人間が、貴女に興味を持ったみたいなの。それで、連れて帰るようにって命令なのよ……ついでにこの組織も潰して来るようにって」
私が本命で、組織を潰すのはあくまでついで。私に興味があるなんて、物好きな人もいるものだ。
『それを断ることはできるんでしょうか』
「あいにくだけど無理ね。どうしても嫌って言うなら、死なない程度に撃ち抜いて引っ張って連れていくわ」
……どう足掻いても連れていかれることは決定事項なのか。痛いのは嫌だ。だからといって、はいそうですかと従える訳もない。
「ファースト、何をしている、さっさと侵入者を始末しないかっ……!」
後ろから声がすると思って見れば、秘書が拳銃を両手で握りしめ、銃口をこちらに向けている。
「早くしろっ!我々の命を守るのが貴様の仕事だろう!無能がっ!」
その瞬間、バンッと音がして、右の頬の真横を弾が飛んでいった。秘書の眉間に赤い華が咲き、ゆっくりと倒れていくのを見た。
「うるせえんだよ、話してる途中だろうが」
銀髪の男は、拳銃を構えたまま笑った。
……あと少しズレていたら、私の頬が抉れていた。スっと背筋を冷たいものが通って、思わず男を睨みつけた。
「フッ、いいじゃねえか、てめえに弾は当たってねえだろ……にしても、仲間が死んでも顔色1つ変えねえのか……面白い」
銀髪の男は笑ったまま、ボスの方へ拳銃を向けた。
「お前が死んでも、同じか?」
ボスに男が問いかける。
ボスの顔は青白く、挙げられた手の震えは先程より酷くなっている。
「そっ、そんなわけ、ないだろう……な、なあファーストっ?」
震えながらもその目には、早く助けろと言わんばかりの力が込められていて。自分は助かって当然。そう思っている目。
何度も見てきたその目に、何故か今初めて怒りが湧いた。