第99章 次は必ず
「降谷さん、なんでそんな事聞くんです?」
「あのハンカチと傘に見覚えがあってね。もしかしたら……」
降谷さんの返事に1人の女性を思い浮かべた。もし、本当に彼女……マティーニだとしたら。少なからず期待してしまって梓さんの言葉を待った。
「あれを渡しに来た人ですよね?」
「見た目といつ来たのかを知りたくて。探している人かもしれないんです」
「来たのは、えっと……水曜日、3日前ですね」
「どんな人でしたか?」
「綺麗な女性でしたよ。黒髪のショートカットで、色白で」
「火傷の痕とかありませんでしたか?」
「長袖の服でしたしそこまでは……あ、でも右のほっぺに切り傷みたいなのが」
最後に見た彼女の姿を思い出す。確かに右の頬は血だらけだった。あの時はそんなに気にしなかったけど、その切り傷のせいなのかもしれない。
「他には何かないですか?」
「うーん……あれを置いてすぐに帰ったので……」
「そうですか」
「あ、でも、蘭ちゃんの知り合いっぽいですよ」
「え?」
「その日、蘭ちゃんもお店にいたんです。その人が出てった後を慌てて追いかけて行ったので……泣きながら帰ってきたのはさすがに驚きましたけど」
「泣きながらですか?」
「はい。二度と会うことができないと思ってたからって。泣いてましたけどすごく嬉しそうでしたよ」
梓さんの話を聞くほどにその人は亜夜さんであるような気がしてしまう。でも、まだ決定的なものがない。
「……あの人悪い人なんですか?」
「まだ可能性の話です。決まったわけではないですから」
「あんなに素敵なママさんが……悪い人だなんて……」
「まあ、人は見かけに……ママさん?」
「はい。あれ、言いませんでしたっけ?小さな男の子が一緒にいたんです。息子さんだって言ってました。1歳と6ヶ月だって」
降谷さんと顔を見合わせた。1歳と6ヶ月……もしそれが本当ならば、あの最終作戦の段階で妊娠していた可能性がある。
どちらにせよこれだけ情報が得られた。蘭にも話を聞いてみる必要がありそうだ。そう思って席を立った。
「あー!待って新一お兄さん!」
歩美ちゃんの声に足を止める。
「これ!最後のこれなんて書いてあるかわかる?」
「たぶん英語の筆記体ってやつなんですけど」
「俺達じゃわからくてよ……」