第99章 次は必ず
差し出された手紙を受け取ってざっと中身を確認した。内容自体は物を貸してもらった事への感謝や健康を気遣うようなものだ。そして、1番最後。流れるような筆記体で書かれていたのは、Martini……彼女のコードネームだった。
背中に一瞬冷たいものが走り、すぐに全身を熱がぶわっと包む。
「間違いない。あの人は生きてる……!」
3人に言葉の意味を説明し、許可をもらってその手紙の写真を撮らせてもらった。ポアロを出て降谷さんの車へ向かう足は次第に早くなっていく。
車に乗ってエンジンがかけられたところで降谷さんのスマホが鳴った。その画面を見て降谷さんは小さく舌打ちをした。
「代わりに出てくれ」
「えっ」
「不味い内容なら折り返すと伝えてくれ」
言われるがまま受け取ったスマホの画面には、赤井さんの名前が。運転を始めてしまった降谷さんを横目に通話ボタンを押した。
「はい。降谷の携帯です」
「新一か」
「すみません。降谷さん運転中で。聞いちゃ不味い内容なら折り返します」
「いや、構わん。スピーカーにして聞いてくれ。二度も話すのは面倒だ」
「はい……それで、どうしたんですか?」
「あの女の……マティーニの目撃情報が出てな」
「は?!赤井さんもですか?!」
「も、って事は君達もどこかで聞いたんだな?」
「ええ、ポアロに来たみたいで……赤井さんはどこで?」
「3日前に志保が会ったらしい。ずっと様子がおかしかったから問いただしてな。なんでも可愛らしいBabyが一緒にいると」
赤井さんの言葉に降谷さんが不機嫌そうな声を漏らした。
「おい、手荒な真似してないだろうな」
「妹にそんな事するわけないだろう」
「まあまあ……赤井さん今どこにいます?俺達は警察庁にむかってるんですけど」
「そうか。志保とロビーで待ってるよ」
「わかりました。じゃあ後ほど」
通話が切れてゆっくり息を吐く。久々に感じる難事件を目の前にした時のような高揚感と少しの疑問。
「どうして今更姿を見せたんでしょう……」
2年間ずっと見つからなかったのだ。ずっと隠れている事もできたはずなのに。
「……バレてもいいと思ってるんだろうな」
「え?」
「たぶん自信があるんだろうな。絶対に捕まらないっていう自信が……守るものができたからこそのものかもしれないが」