第98章 これで、終わり
私も同じように少年に向けて拳銃を構えた。
『今すぐにここを去るなら見逃してあげる』
「アンタにもついてきてもらうよ」
『それはできない相談ね。捕まる気はないのよ』
「それは困る」
聞こえたもう1人の声に視線だけ向けると、降谷がこちらに向けて拳銃を構えていた。赤井の姿はない……狙撃される可能性があるか。
「残りはボスとラムとジン、それからアンタだけ。組織はもう終わりだ」
『そうね……わかってるわ。だからって大人しくする理由はない』
「なっ……ぐぁっ……!」
標準を降谷に移し、すぐに引き金を引いた。ギリギリ気づいたようだが、それは降谷の太ももを貫通した。降谷の方に視線を逸らしたコナン君との距離を数歩で詰めて蹴り飛ばす。コナン君は壁にぶつかって呻き声を上げ、小さな手から拳銃が落ちた。
「マティーニ……!」
『動かないで』
コナン君の頭に拳銃を突きつけながら降谷を見る。そして、防弾ジャケットの内側から爆弾の起爆スイッチを取り出した。ボタンに指をかけて笑う。
『裏切ってしまったぶん、最後くらいちゃんと始末しないとね』
「くっ……」
パリン、とガラスが割れた。起爆スイッチを持っていた右手から力が抜けてそれを取り落としてしまう。右肩にぼんやりと広がる痛みに狙撃された事を理解した。
「もう終わりだ。諦めろ」
『残念、ね……』
そっと目を閉じる。
『長い時間やり合って疲れたわ……どのくらい経ったのかしら……』
「5時間だ。もっと早くに片をつけるつもりだったんだがな」
『5時間……そう……』
聞いた数字に口角が上がった。次の瞬間、大きな爆発音と共に足元がグラグラと揺れた。
「っ?!」
『ふっ……あははははっ……!』
「マティーニ!一体何をした?!」
『こういう時はあらゆる事態を想定しておくものでしょう?起爆スイッチを押せなかったとしても一定時間を過ぎれば自然と爆発するようにしておいただけよ』
建物自体が傾いているのか窓ガラスが音を立てて割れ、通路の灯りはチカチカと点滅する。
『全て炎の中に葬ってしまえばいい。そう思わない?』
「そんな事許さねぇ……」
『相変わらずの正義感ね。でも、子供の姿で乗り込んで来たのは間違いよ』
動く左手でコナン君の首を掴み持ち上げた。苦しそうに顔を歪め、どうにか私の手を外そうとしてくる。