第98章 これで、終わり
『キャンティ、落ち着いて。誰がいるの?』
「アイツだよ!赤井秀一が!」
「……何?」
耳が痛くなるくらいのキャンティは取り乱している。それに反応したジンの声は恐ろしいくらいに低く冷たい。
「キールが始末したんだろ?!その後現れたアイツはバーボンの変装だった!じゃあアレはなんなんだよ?!」
「キャンティ、コルン、一度引け」
「でも……!」
「急げ」
「チッ!」
大きな舌打ちがして音が途切れた。何かを考えるように黙り込んでしまったジンを見上げる。
『ジン?』
「……キールもバーボンも今になって寝返ったわけじゃねぇな。元々あっち側の人間だろう」
『……』
「ただ、敵はヤツらだけじゃねぇ」
『え……?』
ジンは口角を上げた。
「裏で糸を引いているヤツがいるはずだ。それも、相当な切れ者がな」
『なんで、そう思うの……』
1人の少年が脳裏に浮かんで、それでもどうにか言葉を絞り出した。
「まあ、いい。どの道全員始末するだけだ」
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キャンティとコルンが捕まったらしい。通信機越しに暴れる声が聞こえてすぐに消えた。予想していた事だとはいえ、辛いし苦しい。ウォッカはまっ無事だろうか。合流できれば良いのだけど。
警察関係者が何人もいて、出会う度始末して。息の根を止めきれなくても追って来なければそれでいい。それでも、ここに居続ける事はできない。全て消えてしまう前に脱出しないと。
ジンとは背を向けあって周囲を警戒している。視線を動かしながら背後のジンに話しかけた。
『ジン、脱出した方がいいよ。今ならまだ上手く抜けられるはずだから』
「……」
『このままじゃ危ないよ。だから……』
カチャリ、と拳銃が向けられる音がした。ゆっくり振り返ると、ジンが私に銃口を向けていた。
『……どうしたの?』
私は構えていた拳銃を下ろした。
「てめぇは、何をどこまで知ってる」
ジンの目は冷たく、いつも敵に向けている時と同じ。
「何かをこそこそやっていたのに気づかねぇと思ったか」
『……』
「答えろ。何をしていた。何を知ってる」
答えられなくて口を噤む。
発砲音がした。少し遅れて右頬に生暖かいものが垂れて、それを理解した瞬間激痛が走る。痛みのせいで涙が滲んで視界がぼやけた。それでも意識を失わないように手を強く握って歯を食いしばる。