第98章 これで、終わり
作戦前日だ。攻めてくるなら恐らく今日。そう考えていたせいか、かなり早い時間に仮眠から目が覚めた。迎え撃つための準備は既に終わっている。最終手段は……使わざるを得ないだろう。
できる事ならここの残るべきではなかったんだろうけど、たぶんこの建物も見張られている。無理に移動して戦力を削られるより待つ事を選んだ。
横で寝息を立てているジンを見る。もう少ししたら声をかけよう。起こさないようにベッドから抜け出した。少し悩んでネックレスを外す。通してあった指輪と一緒に灰皿の横に置いた。
軽くシャワーを浴びて着替える。動きにくくなるからあまり好きではないけど、何が起こるかわからないから防弾チョッキを着る。左右のホルスターに拳銃を一丁ずつ入れる。耳に通信機を付けて身支度は終わり。そこでやっと一息付いた。
寝ているジンに近づいてそっと頭を撫でる。ゆっくりジンの目が開かれた。
「……」
『起こしちゃったか、ごめん。まだ寝てても大丈夫だと思うよ』
「いや、いい」
そう言ってジンは体を起こす。その様子を見て虚しさを覚えた。たぶん、この姿を見るのもこれで最後になるんだろう。
「どうした」
『ううん、なんでもない』
そう言ってジンから離れる。
『落ち着いてられないの。持ち場にいるから何かあったら連絡して』
そう言い残して部屋を出た。
……これで最後かもしれないなら、キスしておけばよかった。
---
12時を少し過ぎた頃、異様に静かだったアジト内に警報が鳴り響いた。今は正面の入口からの侵入らしいが、駐車場のある裏口からの侵入も時間の問題だろう。片方の拳銃を抜いていつでも撃てるようにして、階下へ向かう。
『っ?!』
腕を掴まれて振り返るとジンがいた。
『心臓止まるかと思ったんだけど』
「……独断で動くな」
『ごめん』
キャンティとコルンはアジトの上階から。入口付近を狙撃している。キャンティの笑う声が通信機から聞こえてくる。そしてコルンの声も。
「見つけた……」
「あ?何を?」
「バーボン……いた……」
「なんだって?!あの野郎……っ?!」
「……どうした、キャンティ」
「チッ!狙撃されてる!」
「仕留められるか?」
「やって、やる、さ……は?なんで、アイツが……」
「どうした」
「なんで?!アイツが生きてるんだよ?!」