第96章 作戦会議
「赤井って……ジョディ先生が言ってた人?」
灰原がぽつりと呟く。俺は冷や汗が出てきた。
「待って、それは……」
赤井さんと灰原を会わせるのは……いろいろとまずい。
「まだ何か隠してるわけ?」
「う……いや、これは……」
「君も知っておくべきだと思う。作戦の前に清算しておかないといけない事だと思うんだけどね」
安室さんの言う事も理解できる。でも、それは……。
無情にも呼び鈴が鳴らされた。博士がドアを開けにいく。心臓の音が大きい。そして、そこにいたのは……素の格好の赤井さんだった。
「諸星、大……なんで……」
「懐かしい名前だな」
「は?!」
「おっと、うっかりしていた」
そう言った声は沖矢さんのものだった。ピッ、と変声機のスイッチが切られる音がした。きっとわざと沖矢さんの声で入ってきたんだ。灰原も驚きすぎているのか、呆然としていた。
「っ……!」
説明しろと言わんばかりの視線が灰原から向けられる。
「あ……えっと……」
「アメリカ合衆国連邦捜査局の赤井秀一だ。例の組織には諸星大という偽名ど潜入していた。表向きでは死んだ事になっている」
「死んだって……」
「奴らの目を欺くためにな。沖矢昴はそのための隠れ蓑だ」
そう言って赤井さんは頭を下げた。
「君にはずっと謝りたいと思っていた。本当にすまなかった」
「っ……」
灰原は涙を流し始めた。それを拭う事をせず、赤井さんに詰め寄っていく。
「お姉ちゃんは、アンタのせいで死んだの?」
「ああ」
「亜夜姉の肩の怪我も、アンタのせいよね?」
「……ああ」
「なんで……なんでよぉ……」
灰原はついに崩れ落ちて声を上げて泣き出した。俺は傍によって背を撫でる事しかできない。
本当に話すべきだったのか、そんな気持ちを込めて安室さんを見た。
「……協力を頼む以上、想定外は裂けたいんだ。もし、作戦中にこの事を知ったらどうなるかくらいわかるだろう?」
確かに危険だろう。灰原が現場に出るわけではないけど、それでも。
「……急がせるようで悪いけど協力するかどうかの返事は明日までに頼む。時間があまりない」
「そうね。他にもやるべき事があるみたいだし」
「……やるべき事?」
「彼女の……マティーニの指示はそれを渡すだけじゃないからね」