第96章 作戦会議
「他に何があるの?」
「ああ。それがかなり厄介というか……それこそ君の知恵を借りたくてね。できるだけ早く組織の前から姿を眩ませ、且つベルモットの身柄をこちらで保護する。ここまでが彼女に指示されたことなんだ」
「……あの女は相変わらずだな」
安室さんの言葉に赤井さんが呟いた。俺はどう反応すべきなのかわからない。なぜ、NOCであるとわかっているのにそんな事をするのか、もしそれが組織の人間に知れたら消されるのは亜夜さんなのに。
「その男や灰原さんほどのものは望まない。作戦決行までの短い時間姿をくらませる事ができれば問題ないんだ」
「私達とベルモットの3人が一度に姿をくらませるなんて不自然だし、かなり難しいから」
「もちろん無理にとは言わない。答えが決まったら連絡してくれ。今日はここで失礼するよ」
安室さん達が帰った後。やっと泣き止んだ灰原と博士と話し合う。危険なのは重々承知している。でも、やっと奴らと決着をつけられるかもしれない。俺の意思は決まっているけど、灰原は……まだ決めあぐねているようだ。
「灰原、お前はどうしたいんだよ」
「私にできる事なんてほとんどないわ。情報だってほとんど知られているだろうし」
「そうかもしれねぇけど……」
「この件、1番危険なのは亜夜姉なのよ。全ての指示が彼女によるものだって知られたら間違いなく消されるわ」
「しかし、ここまでの事をしていたら彼女も逃げようとするんじゃないかの?」
「亜夜姉は逃げないわ。消されるとしてもあの場に留まるはずよ」
「なんでわかるんだよ」
「貴方より付き合いは長いのよ。それに、最後に会った時もそう言ってたし」
そう言って灰原は席を立った。
「おい、どうするんだよ」
「知ってる事は話すわ。でも、それだけよ」
「……わかった」
「それと、一応言っておくけど解毒剤は2週間じゃ完成しないから」
「……おう。あの、今までのやつでも……」
「駄目。早く戻りたいなら協力するのは知識だけにしておきなさい。それと、亜夜姉に危害が及ぶような作戦にはしないでよ」
そう言い残して灰原は地下室へ向かった。その背を見送りながら手を握り締めた。
2週間、それで全て終わるんだ。絶対、全員捕まえる。全ての悪事を暴いてやる。そう思いながら安室さんに連絡を入れた。