第96章 作戦会議
「その薬って……」
「APTX4869……貴方が飲まされたものよ」
「じ、じゃあ!解毒剤作れるんだな?!」
「ええ……」
やっとだ、やっと元に戻れる。そうしたら、組織の奴らも。
「……喜んでるところ悪いけど、そんなにすぐにできるわけじやないから」
「どれくらいかかるんだよ」
「そうね……成分の解析をして、治験を繰り返して……1ヶ月でできたら早い方じゃないかしら」
「1ヶ月か……」
安室さんがボソッと呟いた。
「何かあるの?」
「あるに決まってるでしょ。要件はもっと別にあるはずよ」
確かにそうか……解毒剤の事で頭が一杯になってたけど、薬を渡すだけなら安室さん1人でも問題ないはずだ。でも、水無さんも一緒となると……。
「2週間後、組織が大きく動く計画があるの」
「2週間後?!」
「ええ。そのための下準備で幹部も末端の工作員も動き回ってるわ」
「それをやらせるわけにはいかない。だから、その前日に奴らのところへ乗り込むつもりだ。でも、どうしても僕らだけではこちらの計画に穴ができる可能性がある」
そう言って安室さんは立ち上がった。そして、頭を下げた。
「安室さん?!」
「協力して欲しい。奴らを確実に仕留めるために」
「それはもちろん……」
「それって、私達に何かメリットはあるの?」
俺の言葉を遮るように灰原が安室さんに問いかけた。
「これを届けてくれた事には感謝するけど、何のメリットもないのに計画に協力する理由はないわ。もし、貴方達の計画が失敗でもしたら命を狙われるのは目に見えているもの」
「おい灰原……」
「あら、いいの?私が死んだら解毒剤完成しないわよ。それに、狙われるのは私だけじゃない。貴方も、貴方の大切なガールフレンドも消されるわよ」
「それは……」
灰原の言い分もその通りだ。公安警察が関わるのだから計画が易々と失敗するとは思えないけど、それでも100%ではない。
「ひとまず現段階での話を聞いてもらいたい。その後で協力するかどうか決めてくれていい」
「……わかったわ」
「助かるよ」
安室さんはソファに座り直した。
「それで?」
「少し待ってくれるか?不本意だが、あの男の意見も聞かないといけないからな」
安室さんは顔を上げてニヤリと笑った。
「赤井、どうせ聞いているんだろ?さっさとここへ来い」