第95章 知られてしまった事実
「スコッチに引き金を引かせたのは……アイツを殺したのは僕だったんですね」
『違う!』
ソファから立ち上がって叫ぶように否定した。それでも、バーボンは困ったように悲しそうに笑うだけだ。
「違いませんよ。僕があの場に行かなければアイツは死ななかった」
『っ……ば、馬鹿な事言わないで。私が待機していた事を忘れた?貴方が来なかったら私があの2人を殺したわ。貴方が来なくたって私が……』
「いいえ、きっと貴女は殺さなかったはずです。何も見てないフリをして2人を逃がしたはずだ」
『そんなわけ……』
「それなら」
バーボンが近づいてきて私の右肩を強く掴んだ。
「この肩の傷はどう説明するんです?」
『何言って……』
「あの男を逃がすために貴女が自ら撃ち抜いたこの傷ですよ」
『っ……』
「問い詰めたら教えてくれましたよ。まあ、スコッチの件については黙ったままでしたが、沈黙は肯定とも言いますし」
『……馬鹿ね。どうして話しちゃうのかしら』
呆れてしまい笑いが漏れた。髪をぐしゃぐしゃに掻き乱してため息をつく。
『スコッチが死んだあの時からよ……私の中で何かが狂い出したのは』
あの時抱えた秘密はまだ小さかった。でも、時が経つにつれて秘密が増え大きくなって、後戻りできないほどになった。
『貴方達が潜り込んで来なければこんな事にはならなかった』
「……」
『始末に躊躇う事も、敵の為に自らを犠牲にする事も、変な情がわいて逃がそうとする事も……全部、貴方達がいなければ』
最初は疑っていたのに、いつの間にかそれから目を逸らした。同じ任務に行く事に抵抗がなくなった。3人と組むようになった時期はジンと会う事もほとんどなくて、だからこそ3人に対しての余計な情がわいたのかもしれない。
『ねぇ、名前教えてくれない?貴方と、スコッチの本当の名前。もちろん誰にも話さないから』
「……」
『……まあ、無理よね。話は終わり?それなら早く行って』
「……降谷零。ゼロと書いてレイ。それが僕の名前です」
いつだったか、あだ名の話をしていた。あれは本名から取ったものだったのか。
「スコッチの本名は、諸伏景光。景色の景に光で、景光です」
景光……いつも笑っていた彼の表情が浮かんだ。
『そう……素敵な名前ね』
そう呟いて微笑んだ。