第95章 知られてしまった事実
「何言って……」
『そして、貴方達が消える事によって組織の誰かに危害が及ぶ可能性があるなら……それがベルモットなら貴方達の方で保護して』
「……」
『これで話は終わりよ。それじゃ頼んだわよ』
「何言ってるんです?そんな事を言われてわかりました、だなんて言うと思ってるんですか?」
『貴方の気持ちは関係ない。確実にそれを遂行してくれるならそれでいい』
バーボンは何も言わずに俯いた。
少し喉が渇いたからテーブルの上に置いてあったグラスを取り水を飲んだ。動き出そうとしないバーボンを見てソファに座る。
『さっさと行って。時間に余裕はないでしょ』
「……どうして、貴女はそちら側にいるんですか」
絞り出すような問いにため息をついた。何度同じ事を聞かれるんだろう。
「こちら側に着く気はありませんか」
『何度聞かれても答えは同じよ』
「でも、もし貴女がした事に組織の誰かが気づいたら無事ではいられませんよ」
『その時はその時よ』
志保の手助けができたならそれでいい。もちろんジンのそばにいたいけど、これほどの裏切りをした私がそれを望むのはおかしな話だ。最終的にジンが殺してくれるなら十分だ。
『早く行って』
「……その前に1つ、話をしてもいいですか」
『何を』
「聞いていてくれるだけで構いません」
『……仕方ないわね。手短にして』
「……あの日、僕は必死でした。町中をが走り回りずっと探し続けていたんです。アイツからのメールを見て、死ぬつもりだというのがわかったから」
『……』
「やっと居場所がわかって、急いで向かって……それでも結局間に合いませんでした。あの時の絶望は忘れられません」
『……それって』
「アイツが自殺したのは見ればわかりました。でも、どうしてあの男が殺したと言ったのか、貴女は一部始終を見ていたはずなのにどうして口を閉ざしたのか、ずっとわからなかった」
『バーボン……』
「何度もあの場所に行って何を見落としたのか探しました。そして、ある日気づいたんです。子供の遊び場になっていたのか、階段を駆け上がってくる音が聞こえたんです。その子達を帰した後、僕も駆け上がってみました……あの階段、足音がよく響いたんです」
『っ……』
「命を狙われている状況で迫ってくる足音が聞こえた。そうなれば、あの時アイツが何を考えたのかわかる」