第95章 知られてしまった事実
指定したホテルの部屋で待っていると、呼び鈴が鳴らされた。ドアスコープを覗いてそこにいるのがバーボン1人だけであるのを確認してドアを開ける。
『……遅かったね』
「こちらもいろいろと立て込んでいるもので」
『スマホの電源は切った?盗聴器や発信器は?』
「電源は切りました。気になるなら調べてもらって構いません」
『そっか。入って』
バーボンを部屋の奥に通し鍵をかける。
『そんなに警戒しなくてもいいじゃない』
固い表情でこちらを見る様子に笑いが漏れた。
「それで要件はなんですか」
『前にも伝えた通りよ。私の代わりにやってもらいたい事がある。後々キールにも伝えて』
「……わかりました」
そう答えたバーボンに1つの封筒を差し出した。
「……これは?」
『それを渡して欲しい人がいる。中身は見てもいいけど絶対に全部渡して』
バーボンは封筒の口を開けて中身を取り出した。
「は……?」
驚くのも無理はないだろう。そこに入っているのはAPTX4869とそれを使われた人のリスト、そして写真……志保と明美の写っている写真だから。
「これは、どういう……」
『それを阿笠という男の家にいる女の子に渡して。渡せば全て理解するだろうから』
「待ってください」
『それが無理ならコナン君でもいいわ』
「だから、どうして……!」
『APTX4869は完全犯罪が可能な毒薬……表向きはそうだけど、少ない確率で飲んだ人間の体を幼児化させる事がある。コナン君の存在に疑問を持った事はないの?』
「……まさか、貴女も知っていたんですか?工藤新一の事も、シェリーの事も」
『……まあね』
バーボンも知っているなら説明の手間もない。どこで知ったのかは気になるが……それを私が知っても利益はない。
『それがあれば解毒剤が作れるだろうし、そうすれば元に戻れるはずよ』
「……なぜ、それを知りながら組織に報告していないんですか?」
『……ベルモットと取引してね。コナン君に手を出さない代わりにシェリーには手を出すな、と。まあ、何度かやられたけど、今は落ち着いてるみたいだし』
「……」
『それと……明美を殺された事への仕返しかしら』
「……そうですか」
『絶対に渡して。それから、もう1つ』
「……なんでしょう」
『次の計画が始まる前に貴方とキールは姿を消して』