第95章 知られてしまった事実
それ以降の会話はほとんどなく、作業を終わらせてすぐに別れた。別れ際にも顔色が悪いと言われたし、実際気持ち悪い。大事の前はもう少し落ち着くだろうか。今度空いている時間に薬も買ってこないと。
部屋に戻り、パソコンを開く。今日、望んでいるものが見つからなければこちらは諦めるしかない。そう思いながら調べを進めていく。
結果、見つからなかった。そんな気はしていたが、完全にデータが消えているかもしくは私でも探せないどこかに隠されたか。それでも、あった方が良さそうなデータをUSBに移しパソコンを閉じた。
データがなければ現物が必要だ。私はそれを使った事がないから持ってない。あるとしたら研究室か……もしくはジンがいくつか持っているかもしれない。
大きく息を吐いて立ち上がる。相変わらず食欲はないが今は空腹感はある。軽く食べられる何か……ゼリー飲料とチョコレートをいくつか食べた。そしてシャワーを浴びてベッドに寝転がる。
現物の調達は明日以降で、手に入り次第バーボンに連絡してそれから……とりあえず今日は休もう。
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研究室を覗いてみたが結構バタバタしているようだったので、先にジンの部屋を探して見る事にした。人気がない事を確認してジンの部屋に入り、目的の物を探していく。テーブルの引き出しを開けて、見覚えのあるケースを見つけた。少しホコリを被ったそれを恐る恐る開いてみると、ビンゴ。
『……あった』
赤と白の特徴的な薬……APTX4869だ。そこから2つ抜き取って、薬品保存用の袋に入れる。そしてケースは元の場所へ。しばらく触ってないみたいだが、いつ薬を抜き取った事に気づかれるかわからない。
もし、バレたとして……理由次第では消される。が、それでもいい。これが確実にあの子の元に届くなら。それが私のやりたい事の一つ目。他にもあるが……それはバーボンとキールにやってもらう事になる。そこそこリスクはあるが、あの2人なら大丈夫だろう。
今日、私がやる事はないから今のうちにバーボンを呼び出しておく。もちろん、アジトではなくセキュリティの強いホテルへ。
……そこへ行く前に、マンションの方にも行かないと。薬と一緒に渡してもらいたいものがある。そうと決まれば。
すぐに部屋を出て駐車場へ向かう。車に乗り込んでスマホを見る。バーボンからの返事を確認してすぐに電源を落とした。