第95章 知られてしまった事実
目をこすって時計を見る。さすがに熱中しすぎたか……と思いながらパソコンを閉じる。水を飲んでからベッドに倒れ込んだ。2……いや、3時間くらいは寝ても大丈夫か。食欲もあまりなくて、昼に少し食べたのが最後だ。若干の吐き気もあるがたぶん何も出てこないだろう。
大きく欠伸をして目を閉じる。眠気があるのにすぐに眠りにつけないのはパソコンを見続けていたせいだ。
FBIを始末したあの一件以降、組織内は全体的にバタバタしている。任務もあるが、新たな繋がりをつくる取引よりこまごました仕込みや下調べが増えた。その作戦が動く日は刻一刻と近づいて来ている。
だからこそ、私の計画を進めるのも急がなくてはならない。その作戦が動き出してからじゃもう手遅れだから。
でも、実際はかなりキツかったりする。睡眠時間は削っているし、食欲もわかないから最低限の栄養だけ取っているし。それに加えて少し前から始まった吐き気。どこかでタチの悪い風邪でももらってしまったんだろうか。医務室に行って診てもらった方がいいのはわかるけど、それによって動ける時間が減るのは困る。
ベッドの上で数分おきに体制を変えて、それでもまだ寝付けない。もう一度パソコンに向かおうかと考えたけど、予定通りならジンがそろそろ帰ってくる。
ごろごろしているとドアの開く音がして、同時にタバコの匂いがした。
『……おかえり』
「まだ起きてたのか」
『眠いけど寝れないの』
ジンがタバコを灰皿に押し付けるのをぼんやりと眺める。コートと帽子を脱いで、すぐに私の横に寝転がった。
『シャワーは?』
「……朝浴びる」
『そっか』
ジンにゆるく抱きしめられる。首筋に当たるジンの手は、少しひんやりしていて気持ちいい。髪を梳かれるのも心地よくて、やっと目が自然に閉じてくる。
「作戦の前だ……無理はするな」
『ん、わかった』
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「顔色、あまり良くないわね」
指示を受けて一緒に行動しているキールにそう声をかけられた。
「体調悪いなら……」
『大丈夫。寝つきが良くないだけ』
「そう。貴女の方は順調?」
『……まあね』
キールの言う貴女の方、は私が密かに進めている計画の事だろう。通信器は任務中なら常に付けているし、下手な事は話せない。だからこその聞き方なんだろうけど。
『キールも上手くいってるの?』
「ええ。もちろん」