第94章 vs FBI
「ええ……どうやら彼ら、お仲間が殺された事に気づいてないみたい」
私はジン達と分かれてベルモットとキールと一緒にいた。ベルモットのパソコンに映し出された暗号を見る。
『……』
なんか引っかかる気がする。
「私はキールと向かうから、ジンとウォッカはいつものように」
「了解」
「ああ……大事の前だ。邪魔なハエ共は1匹でも多く……」
私も別で動くか、と持っていたグラスをテーブルに置いた。
「待て……」
その時、通信器から聞こえてきた声に動きを止めた。
「私の話を聞きなさい……」
威圧的では無いのに逆らえない恐ろしさ。ラムの言葉に通信器からそれぞれ驚愕したような声が聞こえてくる。無意識に背を伸ばしてしまうのは、数日前の事があるからだろうか。
そして、ラムの指示。新しく傍受した暗号は、FBIによる罠である可能性が高いということ。ローマ字の綴りが違うらしい。言われてやっと気づく。先程の違和感はこれだったのかもしれない。
居場所をわざわざ知らせてくれた。ヤツらも自信があるのだろう。
それを逆手に取られたと気づくのはいつになるだろう。
ラムがそれぞれに指示を出していく。
「マティーニ……貴女は待機です。この先の動き次第で指示を与えます」
『……了解』
ベルモットとキールと一緒に部屋を出て駐車場へ。すぐ動けるように車の中で待機する事に。
数十分後、逃げていたFBIを狩り終わったところでラムから連絡が来た。クルーザーを準備してすぐに出れるようにしておくように、と。
車通りの少ない道を飛ばして近くの港に着く。数人の工作員とクルーザーを出すために準備をしていると、車のエンジン音が聞こえてきた。
『……本当、ラムって何者なのかしらね』
思わず呟きが漏れた。ジン達がここへ来るように指示を受けたのは数分前だと言う。つくづく恐ろしい人だ。
港にも数人の見張りを置いて、クルーザーを出した。向かう先は海猿島。おそらく、車で逃げていたFBIの1人がそこへ流れ着いている。ジンが対岸から火を見たらしい。
しばらくクルーザーを走らせて海猿島の桟橋に着いた。私もここで降りて逃げたFBIを一緒に探したいんだけど、クルーザーを工作員に任せるわけにもいかず。他のメンバーが降りていくのを見守る。最後に降りたキールと一度視線が合って、すぐに逸らされた。