第91章 タイトルの意味
やってもらおうとしてる事はいくつかある。でも、それを組織の人にバレるわけにはいかない。そして、その中でも見つかるかどうかわからないものもある。限界までやれる事はやるつもりだがタイムリミットがある。
『……ちゃんとしなきゃ』
両頬をパチンと叩いてアジトまでの道を急いだ。
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プライベートで使っていたスマホは全ての連絡先を消してから解約した。数件のメールが入っていたようだが、それを見ると気持ちが揺らぐ気がしたから内容も見ないで破棄した。
変装道具は処分したから素顔のまま。それでも、髪型を変えたり眼鏡をかけたり、服装の系統なんかでも雰囲気はがらりと変わる。これなら組織の人以外には気づかれないだろう。
なんとなく、波土禄道がライブのリハーサルをすると言った会場へ向かった。助言通り、園子ちゃんに頼んでリハーサルを見学できるように手配してもらったらしい。今から行ったところで私は関係者ではないから入れないし、そもそもこの顔では園子ちゃんに会えない。
なんて事を考えながら建物の前を通り過ぎようとしたのだが。
「あれ、亜夜さん?」
声をかけられて振り向くと、そこには梓さんがいた。
「亜夜さんも来たんで……」
『貴女、誰』
「え……?」
彼女とこの顔で会った事はない。だから知ってるはずがない。
『誰』
「……そんな怖い顔しないで」
梓さんの顔が怪しげに微笑む。そして、聞こえてきた声は
『ベルモット……貴女何してるの?』
「ちょっと気になってね……あの子達も来るみたいだし」
『……』
「貴女も来たんじゃないの?」
『たまたま近くにいたから覗いてみようと思っただけよ。バーボンが任されてるんだし、私の出番はないでしょ』
「あらそう。それなら、私の知り合いって言えば入れるんじゃないかしら」
『貴女の言うあの子達が私の思ってる子達と同じなら断るわ』
「あら、何かあったの?」
『さあね……というわけだから』
そう言って踵を返そうとしたのに。振り返るとバーボンがこちらに向かって歩いてきていた。
「なぜ貴女がここに?」
『……たまたまよ』
「安室さんじゃないですか!」
梓さんの声を出しながらバーボンの腕に自身の腕を絡めるベルモット。
「梓さん……じゃありませんね?誰ですか?」