第91章 タイトルの意味
ネットニュースが上がった日から2日程経った。最近立て続けの任務でかなり消耗している。しかも、今日はよりによってバーボンと組まされているせいで、いつも以上に神経をすり減らしてしまった。
信号待ちの最中、ハンドルを叩く指の音が車内に響く。いつもだったらバーボンが車を出すのだが、今は修理に出しているらしい。この間も何かで修理に出していた気がする。RX-7って壊れやすいのだろうか。
『例の任務、任されたの貴方よね』
「……ええ。そうですね」
『まあ、ロックミュージシャンが何か知ってるとは思えないけど』
「ほんの少しでも可能性があるなら潰しておくものでしょう」
観覧車での一件以降、バーボンとは何度か会っている。不思議なくらい今までと変わらなくてかえって不気味に思った。だからこそ、スパイなんてやってられるのだろう。
「どうやって入り込むかはまだ考えているところですが」
『……たしか、波土禄道の所属するレコード会社に鈴木財閥が出資していたはずよ』
「使えるものは使え、という事ですか」
『嫌なら関係者に変装すればいいんじゃない?今回の件ならベルモットだって協力してくれるだろうし』
信号が変わったのを確認して車を発進させる。
「貴女はどこまで知っているんですか?ASACAの事」
『残念だけど何も知らないわ。時々耳にした事がある程度で、どうしてここまで組織が警戒してるのかわからないの』
「本当に知らないんですね?」
『ここで嘘ついて何になるのよ。本当に知らないから』
「……そうですか」
『さっさと探って報告して。そのニュースが流れてから皆ピリピリしてるの』
「貴女は来ないんですか?」
『必要ないでしょ』
「彼女達にしばらく会ってないでしょう?最近ポアロにも来てないみたいですし。いい機会じゃないですか」
『……もう会わないわよ。変装道具も処分したし』
「おや、何かあったんですか?」
『貴方には関係ないわ』
そんな事を話していれば、いつの間にかバーボンを下ろす場所についていた。
「……そろそろ何をさせるつもりなのかも聞きたいところですけど」
バーボンの雰囲気が一変して、スっと細められた目に射抜かれる。
『こっちもおおっぴらには動けないの。指示するまで変な気を起こさないで』
「……そうですか」
バタンと閉められたドアにため息をついた。