第91章 タイトルの意味
とある任務の帰り道。ウォッカの運転する車の中、外を流れる景色を眺めていた。しばらくして、ウォッカが思い出したように話し始めた。
「おっ死んだらしいですぜ、羽田浩司の事件を探ってた堀田凱人……」
「フン、17年前にラムがぬかった仕事なんざ知った事か……」
私がこの組織にきて約10年。何度か聞いた事のある話だが、詳細を教えてもらえた事はない。
『17年前に何があったの?』
「ああ、マティーニは知らないんですね。あれは……」
「ウォッカ」
「……すいやせん」
話そうとしてくれたウォッカをジンの声が止めた。
『なんで教えてくれないのよ』
「過ぎた事だ。お前が知る必要はねぇ」
この様子じゃ無理か……と諦めてスマホを開いた。
「それより気がかりなのは眠りの小五郎だ。今朝のその事件……ヤツがまた1枚噛んでいたらしいじゃねぇか……暗がりに鬼を繋ぐが如く、鬼だったら眠ってる間に始末しねえとな」
毛利小五郎がその現場にいたのならコナン君もそこにいたんだろう。あの子の事だ。もしかしたら、17年前の事件について私より知っている事があるかもしれない。だとしたらおもしろくない話だ。
そんな事を考えながらネットニュースを上から順に目を通していく。1番大きく取り上げられているのは、ロックミュージシャンの波土禄道が5年振りの新曲を出すらしい。そのタイトルを見て引っかかった。
『ねえ、波土禄道って知ってる?』
その問いに答えてくれたのはウォッカだった。
「ええ。ロックミュージシャンですよね?それがどうかしたんですかい?」
『ネットニュースの上位に来ててさ……5年振りの新曲出すとかで』
「それがなんだ」
『その新曲のタイトルが、アサカらしくて。ローマ字でA、S、A、C、Aなんたけど……聞き覚えあるなぁって』
車内の空気が一気に張り詰めた。
「見せろ」
そう言ったジンの手にスマホを渡す。ジンはしばらく画面を見てから大きく舌打ちをした。
「こんな野郎がその事を知ってるとは思えねぇが……これは探りを入れる必要がありそうだ」
返されたスマホを受け取ると、ジンはどこかへ連絡を取り始めた。
ジンがそれ程までに警戒するASACAって一体何なのか……近いうちに誰かが関係者に近づくだろう。ただの偶然であって欲しいものだが……もしかしたら、何かを知れるチャンスかも。