第1章 組織との出会い
部屋を出て、ボスの部屋を目指して走る。
ボディーガードとして扱うならもう少し近くに部屋を用意してくれればいいものを。何が嬉しくて3階から7階までかけ上がらないといけないのか……。
と、思いながら走っていると、思わず息を飲んだ。
階段を登りきった先から見えるのは……血溜まり。
息を殺して、足音をたてないよう、そっと通路を覗いた。
……そこに広がる、おびただしい数の、死。死体なんて見慣れてるはずなのに、胃の奥から何かがせり上がってくるのを感じた。
この先にあるのはボスの部屋だけ。ここにいる者達は、おそらく助けを求めようとしたのだろう。その思いも虚しく叶うことはなかった訳だが。
……急がなければ。力の抜けそうな足に鞭を打って走った。
だが、皮肉にも侵入者は、私よりに先にボスの部屋に辿り着いてしまったようで。扉は開け放たれていて、その奥に、青ざめた顔のボスと、黒い衣服を身にまとった男女か3人見えた。
すると、サングラスをかけた男がこちらを向いた。
「兄貴、例のガキですよ」
兄貴と呼ばれた男と目が合った。
この男……いつかの取引相手だ。この目つき、忘れない……人を殺すことを何とも思わない、そんなやつの目。
「わざわざ出向いてくれるとはな……探す手間が省けた」
その言葉にボスが反応した。
「ファースト!!私を助けろっ!!!」
「おっと、勝手に動かれちゃ困るんだ。大人しくしてな」
サングラスの男がボスに銃を向ける。ひいっと言ってボスは震える手を上に挙げた。
『……いくら何でも無礼が過ぎるのでは?以前の取引で不備でもあったんでしょうか?それなら……』
「ああ、違うのよ」
今度は金髪の女性が言った。
「もうちょっと静かに済ませるつもりだったんだけど、あなた達の所の人達が騒ぐものだから……それと、今日来たのは取引のことじゃないわ」
『では、なんの用でしょうか……』
女性は微笑みながら言った。
「貴女……私達の組織に来ない?」