第86章 純黒の悪夢
後ろから足場が崩れていく。それに巻き込まれないように、必死に走って……どうにかノースホイールに着地したのだが。
『っ……』
大きな揺れと共に車軸からホイールが外れたらしい。耐えきれずバランスを崩し、体を打ち付けた。体中に鈍い痛みが走る。咄嗟に受け身を取ったのはよかったが、その時に腕を強く打ったみたいだ。でも、今は止まってる場合じゃない。地響きと共に地面が動く。これは……転がってるのか?このままじゃ、子供達が。
よろよろと立ち上がり、足を進める。その間にどうするべきなのかを考えた。
子供4人なら大柄の大人1人分くらいの体重だろう。それなら抱えて……いや、4人となると前と後ろと左右に1人ずつ。もし、途中で私が転んだりしようものなら誰かが怪我をする。何かできないか、と考えたが今私が持ってるのは拳銃のみ。こんなものじゃ、誰も助けられない。
どうにかホイールの外側に出た。これが進む先には、水族館がある。止められなければ、何人死ぬのだろう……私に何ができる?
「とどけーっ!!!」
微かな声に振り返ると、こちらに向けて何かが飛んできた。コナン君……?確信するより早く走り出した。そして、ギリギリのところでその細い腕を掴んだ。
「亜夜さん?!」
『っ、ごめん、ちょっとまって……』
体を支える腕に激痛が走った。引き上げなきゃとは思うけど力が入らない。手の力も抜けてきて、このままじゃ落ちる。無常にも、耐えきれなかった指はするんと外れてしまった。が、その手を誰かが掴んでくれた。
『あ、赤井……』
「礼を言うべきだろうが、今はこっちが優先だ……何か策があるんだろう?」
「うん!」
赤井の問いにコナン君は大きく頷いた。そして、そのまま引き上げられる。
「大丈夫か」
『……ええ』
この男に心配されるとは思っていなかった……助けられたのも癪だが。
コナン君は何かの道具を取り出し、ホイールのレールに取り付けた。そしてボタンを押すと、ベルトのようなものが2つのホイールの間に張られる。それによって転がる速度は若干落ちたが、それでも止まりそうにない。
『これじゃ止まらないわ』
「大丈夫!まだ手はあるよ!」
そう言ってコナン君は走り出す。それを追うように赤井も。私は……どうしたらいい?
ちらちらとゴンドラの中を確認しながら進む。と、子供達の姿をみつけた。