第86章 純黒の悪夢
「姿が見えれば落とせるの?」
「ああ」
『そうね』
追い返されたらそれまでだと思っていたが、少なくとも今の状況では猫の手も借りたいといったところだろう。敵であってもそれなりの実力があれば、という事か。
「でも、どうやって?」
コナン君の問いに答えたのは赤井だった。
「ローターの結合部を狙えば恐らく……」
「結合部なんて見えなかったよ?」
『まあ、正面を向き合ってちゃ無理ね。どうにか姿勢を崩さないと』
「ああ。なおかつローター周辺を5秒照らす事ができれば……」
「照らす事はできそうだけど……だいたいの形がわからないとローター周辺には……」
ガガガっ!
再び銃撃が始まった。このままじゃ観覧車が崩壊するのも時間の問題だろう。
「まずい……車軸にはまだ半分爆弾が残ってる……」
バーボンが背負っていたバッグを開けて何かを操作し始めた。よく見るとそれは私が仕掛けた起爆装置のようで、解除されてしまった事が少しショックだった。今回ばかりは仕方ないが。
「クソォ!撃ってくる方向はわかるのに、ローターがどこにあるかわからない!」
横にいたバーボンは再びバッグを持ち、数歩下がった。
「だいたいの形がわかればいいんだったよな?……よし、見逃すなよ!!」
助走を付けて空中へ放り投げられたバッグは、少し遅れて爆発した。
「見えた!」
コナン君が動き出すと同時に私もライフルを構えた。
「外すなよ」
『馬鹿にしないで。この距離なら外さない』
コナン君が蹴り上げた何かはヘリにぶつかり、上空で弾けた。その衝撃と光によってヘリの姿勢が大きく崩れる。
ごめん、ジン……。
「堕ちろ」
赤井の声に合わせて、私も引き金を引いた。そして、2つの弾丸はヘリのローター部分に突き刺さる。ローター部分から火が吹き出し、更に大きく揺れる。
「やったか!」
「よし!」
これで大丈夫か……と油断していた。ジンがやられたまま終わるような男ではないとわかっていたはずなのに。
車軸を破壊する気なのか、再び銃撃が始まる。きっと、撃っているのはジンだ。
『バーボン!残りの爆弾は?!』
「ノースホイールの方はまだ……!」
『ノースって……』
子供達のいる方じゃ……私はその場にライフルを放り投げ走り出す。バーボンの呼ぶ声が聞こえた気がしたが、今はそれどころではない。