第86章 純黒の悪夢
コナンside―
「……亜夜さんなのか?」
『あら、知ってたのね』
俺の問に目の前の女はそう言って笑みを深くした。
―次は敵かもしれないからな。
あの日、父さんに言われた言葉を思い出す。
確かに蘭と園子を助けたなら堂々としてればいいのにすぐに姿を消してしまい身元もわからない人だった。でも、そうでなければいいと、悪い人ではないと思っていたのに……よりによって組織の奴らの仲間で、今まで仲良くしてくれた亜夜さんで……突きつけられた事実に手を強く握り締めた。
しかも、この人は俺が工藤新一であることを知っている。そして、赤井さんが生きていることも知られてしまった。安室さんと水無さんのことも……最悪だ。
「なんでここに……」
『決まってるじゃない。キュラソーを連れ戻すためよ。まあ、私がする事なんて無いのだけど。それより、あのメールを送ったのは貴方?』
「……さあ、なんの事かわからないよ」
『そう。でも、キュラソーの記憶が戻り、彼女が私達の元へ帰ってくればそれで終わりよ……それより、あの2人に何か用があるんでしょ?』
「あの爆弾もアンタ達の仕業か」
『まあね。量も多いから結構苦労したのよ』
「っ……!」
『せいぜい足掻いてみればいいわ。どこまでできるか見物ね』
そう言い残しものすごい速さで走り去ってしまった。思わずそれを追いかけようとしたが、安室さんの声に引き戻される。最優先は爆弾の解除か。
たくさんのコードが繋がった消火栓の前。予想通りトラップが仕掛けられていたようで、無理矢理開けなかったことに息を吐いた。
「ねえ、安室さん」
「なんだい?」
「マティーニは……亜夜さんは悪い人なの?」
「否定はできないね。でも、君達と関わっていた姿が全て偽りだとは思わないよ」
「それって……」
「今はコイツとキュラソーが先だ。マティーニは……すぐに連絡をするような事はないだろうから」
「う、うん」
安室さんの確信したような言葉に頷くしかなかった。
そして、安室さんは起爆装置の解除。赤井さんは狙撃ポイントに戻り時間稼ぎ。俺は観覧車を照らすスポットライトの配色を確認して……観覧車内部を走る。
しかし……数分後。観覧車の照明が消えた。
「くそぉ、始めやがった!」
早く行かないと……!