第86章 純黒の悪夢
ベルモットを警察病院の近くのにあったホテル前でおろし、私はアジトへ戻る。手の空いている数人と大量のC4と起爆装置を大きめのトラックへ積み込んだ。
そして、夜。誰もいなくなった東都水族館に忍び込み、目的の観覧車へ。ライトで手元を照らす人と爆弾を配置する人で分かれ、車軸とホイールの間に爆弾を等間隔で配置していく。そして、そこへ繋がる電気コードを消火栓の横に開けた穴から通し、そこに隠した起爆装置へ繋げる。全て繋げてから消火栓の扉を閉め、そのロック部分にトラップを仕掛けた。
暗いこともあって予想以上に時間がかかった。全て終わったのは空が明るくなり始めてから。
『ご苦労さま。引き上げましょう』
一緒に来ていた数人に声をかけ、観覧車をあとにした。
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スタウト、アクアビット、リースリングが始末された。それぞれを始末しに海外へ出ていた4人は既に日本へ向かっているようだ。
爆弾の設置で体も心も疲れているから少しでも寝たいのにどうしても寝付けない。
もしかしたら、もうキュラソーに会えないんじゃないか……そんな考えが何度も頭に浮かぶ。それを振り払うように頭を振った。
大丈夫、絶対帰って来る……今はそう信じるしかない。
『っ……』
鳴り響いた着信音に立ち上がる。テーブルの上に置いてあったスマホを手に取り耳に当てた。
「終わったか」
『うん。配置も起爆装置も問題ないよ……そろそろ着くの?』
「ああ……次の仕事だ」
『……何?』
「キールを連れて来い。場所は……」
港近くの倉庫の場所を伝えられ、そこで電話が切れた。
キールは今日、アナウンサーに復帰だとかで話題になってた。早めに行かないと。耳に通信機をつけ、ホルスターには愛銃を。なんとなくライフルのバッグも持って部屋を出た。
キールの住むマンションの前に車を止め、外に出て出てくるのを待つ。タイミングがよかったようで、数分後には目的の人物が現れた。
『こんにちは、キール』
「……マティーニ?何か用かしら?これから仕事なの」
『悪いんだけど、ついてきてもらえる?あまり手荒なことはしたくないわ』
「……休むって連絡いれるから少し待ってくれる?」
数言の電話を終えたキールを乗せて、指定された倉庫へ向かった。
「理由は聞かせてもらえるのよね?」
『いいけど……本当に心当たりはない?』