第86章 純黒の悪夢

アジトに帰る道中、町中の街灯が消えた。一度、路肩に車を止めスマホのニュースを確認する。どうやらかなり大規模な停電が起きているらしい。しばらくすると、ちらほら電気が戻り始めたので、ゆっくり車を出す。


アジトに戻りベルモットのいる部屋へ。部屋に入るとベルモットがこちらを向き、そして呆れたようにため息をついた。

「浮かない顔ね」

『仕方ないでしょ。心配なの』

「キュラソーが簡単に死ぬ人間じゃないことはわかってるでしょ」

『それは、そうだけど……』

「停電でさっきまでパソコンが使えなくてね……やっと復旧したからもう一度調べてみたんだけど、キュラソーのGPSの反応が途切れたのは首都高辺りよ」

『首都高って……さっき事故があったって』

もしかしてそれに巻き込まれたんじゃ……そう思うと背筋が冷たくなる。

「まだ可能性の話ではあるけど……朝になったらその周辺を調べに行くわ。あら、メール……？」

マウスを数回クリックしてベルモットが届いたメールを開く。そして、息を飲むのがわかった。

『何？誰から？』

「……ラムよ。どうやら途中でキュラソーがメールを送ったみたい」

その画面を覗き込んで、私も息を飲んだ。

《スタウト、アクアビット、リースリングの始末を。バーボンとキールはNOCである可能性があります。拘束して吐かせない》

『……こんなにいたなんて』

「ええ、驚いたわ。でも、バーボンとキールのことはどうして」

『メール打ち切れなかったのかしら……それか、どうしようもない状況になってどうにかそこまで送ったか』

「とりあえずやる事は多いわね」

『そうだね……私、何をすればいい？』

始末をする3人は偽の任務で誘い出す。そして、それぞれの始末をジンとウォッカ、キャンティ、コルンに指示。バーボンとキールは万が一NOCであった場合、事前に連絡すると逃げられる可能性があるから適当な場所で待ち伏せすることになった。

「NOCの始末もそうだけど、一番はキュラソーを連れ戻すことね」

『そうだね』

「……貴女、1時間くらい休んでらっしゃい。そうしたら、キュラソーを探しに行きましょ」

『うん、そうする。ありがと』

自室に戻ってベッドに倒れ込んだ。キュラソーが心配だしこの状況では目が冴えてしまい、休める気がしない。それでも無理矢理目を閉じた。