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【名探偵コナン】黒の天使

第85章 重なる影※


沖矢side―

遠くで玄関の扉が閉まる音がした。深くため息をついてテーブルの上を片付け、その後玄関の鍵を閉める。寝室にしている部屋へ入り、マスクを脱ぎ捨てた。

「やはりそうか……」

体にあった傷は、あの女が俺の予想していた通りの人間であることを決定づけた。明日にでもそのことをボウヤに伝える必要があるな。博士のところに住むあの少女は気づいているはずだが……あの女との関係を考えれば庇うことも有り得るだろう。

まさか、沖矢昴に赤井秀一を重ねるとは思いもしなかったが。気づかれてはいないだろうが……言ってやりたい事とはなんだろうか。どちらにせよ、赤井秀一の姿て会うことはないだろうし、聞くこともないのだが。

しかし……その気になってしまったコレはどうしようか。体を確認するには脱がせるしかなかった。そのためには行為に持ち込む必要があったのだが……思いのほか熱が入ってしまったようだ。

数年前と同じか。俺はあの女を抱くことはできないらしい。まあ、あの時拒まれたキスをしてやれただけ良いだろう。

手早く処理してしまおうと服を脱ぎかけた時、響いた着信音に舌打ちをしてしまった。こんな時に誰だ、と画面を見れば予想外の人物からだった。

「……どうした。電話は控えろと言ったはずだ」

「どうしても急いで伝えたくて……明日の夜、警察庁に組織の人間が侵入するわ」

聞こえてきた水無怜奈の声にわずかばかりめを見開いた。そして続きを促す。

「目的は」

「NOCリストよ」

「誰が」

「現段階ではマティーニだと」

「……了解した」

そう告げると電話は切られた。

厄介だな……日本の警察が持つNOCリストともなると膨大な情報になるだろう。世界中の情報があるかもしれないものを、組織に盗まれてしまったら。

「チッ……」

もう少し連絡が早ければ。何がなんでもあの女を帰さなかったのに。いや、そうなればもっと大規模な何かが起きる可能性もある。あの女に何かあったとしたら、ジンが動かないはずがない。

とにかくキールに聞いた情報を他のFBIの連中にも伝えねば。後始末を頼むことも有り得る。公安の彼もその事は知っているだろうし、その場で止めてくれればよいのだが。あらゆる想定をしておく必要がある。

……その気になっていた自身がとっくに元に戻っていたことに気づくのはもう少し後だった。
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