第85章 重なる影※
つぷ、と指が1本差し込まれた。探るように動きながらナカへ入り込んでくる。指が抜き差しされると、徐々に水音が耳に届いてきてナカがキュッと締まった。
「気持ちいいんですね。これならすぐ2本目も入りそうです」
『う、やぁ……んぁ……』
上の敏感な部分を的確に攻められて腰がガクガクと揺れる。いつの間にか3本に増やされていた指もしっかり咥えこんで、与えられる快感をただ受け入れる。
理性をどうにか保てているのは、このまま寝落ちてしまうのは絶対にできないということ。そして、記憶のどこかに何かが引っかかるような感じがあるから。
「考え事ですか?ずいぶん余裕そうですね」
『や、まってちがうっ……ああっ!』
秘芽を親指で押し潰されて、ナカへ入れられた指でぐちゃぐちゃに掻き回される。もうすぐそこまで来ていた絶頂を止めることはできずに、一際大きく腰が跳ねた。イってしまった……なんて理解してる間に、また指が動き出す。
『んっ、まっ……やだ、イったばっかり……っ!』
「1回じゃ足りないでしょう?」
そう言って見下ろしてくる緑色の瞳。それが、いつかの記憶に重なった。
『ライ……っ?』
「……まだ飲み足りませんか?」
目がスっと閉じられてしまった。ナカにあった指も抜かれて、身体も退けられる。
『違う、んです……でも、その……』
「なんでしょうか?」
『……赤井秀一、という名前に心当たりはありますか?』
「……さあ、覚えがありませんね。どのような方なのか聞いても?」
『貴方に似ているんです』
「ほぉ……見た目が、ということでしょうか」
『姿も声も違いますけど、どこか重なるんです。あの男と同じなのは、左利きなのとタバコの銘柄……それと、その瞳の色だけです』
「あの男などという呼び方……余程嫌われてるのでしょうか」
『もう赤井は死んだんです。変ですよね、どうしてもそれが信じられなくて。どこかで生きているなら、言ってやりたい事があるんですけど』
「……そうですか」
重々しい空気に包まれる。私は床に落とされていた服を拾い上げ身に付け始めた。
『すみません、帰ります』
「それは残念。お送りしましょうか」
『大丈夫です』
さっさと服を着てバッグを持ち立ち上がる。部屋を出る前に振り返って頭を下げた。
『誘ってくれてありがとうございました。ご馳走様でした』