第9章 すれ違い
『すごく腹立つんだけど』
「は?」
ウォッカがポカンとした顔を浮かべる。
『なんで、ジンが後悔するのよ。確かに急な呼び出しだったけど、行ったのは私の意思だし、あの時撃たれたのだって私の責任だし、何も気にすることないじゃない』
意味がわからない。てっきり怒っているから来ないのかと思ってたから、自分から会いに行くこともしなかったのに……。
『ねえ、ジンの居場所教えて』
「え、それは……」
ウォッカの狼狽えぶりから、きっと口止めされてるんだろうと察する。
『いいから……それと私の車の鍵どこ?』
「じ、自分で運転して行く気ですかい?!」
怪我もあるのに……と言われてもなあ。
『じゃあ、乗せてってくれるのね』
「そういう訳じゃ……」
もう、このままじゃ埒が明かない。ウォッカの肩を掴んで睨みつける。
『私の我儘って言えば、貴方が責められることもないでしょ』
「ですが……」
『もう!私が責任取るから!車の所で待ってて!これから準備して後から行くから!』
そう言ってウォッカを無理矢理部屋から追い出した。
外に出るので一応変装をした。万が一、どこかで見られてたら他の人も危ないし……。包帯も邪魔だから取った。あと数日で外せるって言われたし、少しくらい早くても大丈夫だろう。
『……跡残るな』
でもそれでいい。ジンが傷つかずに済んだ証なのだから。
駐車場へ降りると、ウォッカとベルモットがいた。
『あれ、ベルモット。どうしたの?』
「……ちょっと野暮用。方向一緒だから乗せてってもらうの」
『そうなんだ。じゃあ、先に……』
「いいの。急ぎじゃないし、場所は貴女の方が近いから」
てっきり外出しようとしていることに怒られるかと思ったけど、そのまま乗るように促される。
「じゃあ、行きやすよ」
ゆっくり車が動き出す。
「ジンの所行くんでしょ?」
ベルモットに聞かれ頷く。
「はあ……全くいいご身分よね。女の方から出向かせるなんて……嫌になったら私の所にいらっしゃい」
『ありがとう……気持ちだけ受け取るね』
しばらくして、ホテルに着いた。
「……ここの***号室です」
『わかった。ありがとう』
2人に別れを告げ、部屋へ向かう。心臓がドキドキしてる。
部屋のドアをノックした。
「……誰だ」
『私。開けてくれない?』