第83章 憧れの人
「……いつか見つかるといいわね」
「はい!」
梓さんの言葉に蘭ちゃんは頷いた。
「見つかるかはわかりませんが、よろしければその女性の特徴とか教えてもらえませんか?」
「わかりました。えっと……」
そう言って話し始めたバーボンと蘭ちゃんを横目に、コナン君の方を伺う。パチリと視線が合わさると、慌てたように目を逸らされた。
『どうかした?』
「なんでもないよ!蘭姉ちゃんの話聞いてちょっとびっくりしちゃっただけだから!」
『……そう』
貴方は知ってるでしょう、なんて言葉は飲み込んだ。あの時、コナン君……いや、新一君か。もし、この子に会ってなかったら2人を見殺しにしていたんだと改めて気付かされる。気まぐれでしかなかったけど、助けたことで今、こうして言葉を交わせる仲になれた。
それでも、素の姿でこの子達の目の前に現れる気はないのだけど。
『コナン君も気をつけるんだよ。いつ、どこに悪い人が潜んでるかなんてわからないんだから』
「うん!ところでさ、亜夜さんってお酒とか飲……」
『あ、ごめん。そろそろ帰らなきゃ』
コナン君の言葉を遮り、時計を確認して立ち上がる。
『ごめんね、その話はまた今度しよう?』
「……う、うん」
もしかしたら、もう知られてしまったのかも。だからこそあの視線なのか……。
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帰ろうとしたところを、もう少しで上がるからとバーボンに引き止められ……やっぱり恋人なのかと嬉しそうに聞いてきた蘭ちゃんと園子ちゃんにしっかり訂正を入れる。炎上の心配をしてか、顔色をサッと変えた梓さんにも同じように。
そして、今。バーボンの車に乗ってアジトまで送ってもらう。
「まさかとは思っていましたが、あの時助けたのはあの2人だったんですね」
『……その言い方だとずっと前から知っていたようだけど?』
「彼女達が誘拐事件に巻き込まれたのは知っていたので……先程の話でようやく確信が得られましたよ」
『……見つかるかもなんて、期待させるようなこと言ってどうするつもりなの?』
「おや、会う気はないんですか?」
『当たり前でしょ。犯罪者に助けられたなんて知ったら……』
「それでも良いと言っていたでしょう。例えどんな人であっても、お礼がしたいと」
『会わないって言ってるでしょ。タイミング見て、見つからなかったって謝っておくのね』