第82章 子供の頃のアダ名
コナンside―
「なあ灰原、亜夜さんって何者なんだ?」
ベルツリー急行に乗って以来、灰原はぼーっとしていることが多くなった。いくら組織の奴らの目を欺いたとはいえ不安が残るのはわかるが、それだけではないような気がしてそう問えばその肩がピクリと揺れた。
「……さあ、知らないわ」
「本当だな?奴らの仲間じゃないんだな?」
「もし、そうだとしたらどうして私は生きてるんでしょうね?」
「そ、それは……そうだけど……」
確かに灰原の言う通りではある。あの日、亜夜さんは灰原を見るなり泣き出した。あれは演技ではないと思うし、そもそも灰原が彼女に怯える様子もない。だから、ただの思い過ごしだと思っていたのに。
亜夜さんは杯戸中央病院に現れた。しかも、バーボンと共に。薄れかけていた疑いはまた湧き上がる。が、それだけではなく、バーボンこと安室透が過敏に反応したゼロという言葉……もし仮に安室透がゼロ……公安警察の人間であるならば、あの場にいた亜夜さんも警察の人間なのか?
その事を伝えるためにジョディ先生を呼び出し、楠田陸道のことは絶対に外部に漏らさないように伝えた。そして、あの2人のことも言おうとしたのだが、ジョディ先生の知り合いが大怪我を負ったらしく伝えそびれてしまった。
そして、その事件はしたのだが……ジョディ先生に変装したベルモットによって楠田の情報は漏らされてしまった。
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「黒羽亜夜?そう名乗ったのか?」
「うん……昴さんも会ったことあるでしょ?」
「……」
安室透を出し抜くための策を昴さんと話し合う。その時に亜夜さんの名前を出せば、閉じられていた目が開かれた。
「もしかしたら、安室透は公安警察かもしれないって言ったでしょ?だとするなら、あの時一緒にいた亜夜さんも……」
ピッと変声機のボタンが押される音がした。
「同姓同名の別人だと思いたいが……もし、その彼女が俺の思う人間であるならば、その可能性はない」
「え……?」
「俺が組織にいた頃、あの容姿の女は見たことがない。が、その名前を名乗っていた女はいた」
「じゃあ、あれは変装ってこと?で、でも、何のために?」
「それがわかれば苦労しない。そもそも確信もないからな。だが、気をつけろ」