第82章 子供の頃のアダ名
『そうだけど……よくわかったね』
「だって事件があって、そのせいで帰れないなんて……事件現場に残るような人と一緒にいたってことですよね?それで、亜夜さんと仲の良い人って安室さんかなぁって」
『ふふっ、蘭ちゃんも探偵みたいね』
「そんなことないですよ」
そう言う蘭ちゃんとくすくす笑いあっていたのだけど、急に蘭ちゃんが真剣そうな表情をする。周囲をちらちら見た後、コソッと私に耳打ちしてきた。
「……やっぱり、安室さんと付き合ってたりするんですか?」
『まさか。もしも、そんなことがあったら梓さんに怒られちゃう。炎上っ!って』
「うーん、友達とも違いますよね……」
『まあね。でも、前にも言ったじゃない?私、他に好きな人いるから』
しばらく会えていないジンのことを思い浮かべる。距離を取ることを決めたのは自分だけど、それでも少し寂しいというか、虚しくなるというか……今日、帰ったら会えるだろうか。
「恋人ではないんですか?」
『……そうね。恋人、ではないと思う』
「片思いってことですか?」
『それもよくわからないの。あまり感情が表に出ない人だし……そばにいることは許されてるんだろうけど……』
「なんか……大変なんですね」
『うん。その人に言えないことも多いし。だからこそ、そばにいられるだけでいいのかなって思っちゃう』
「……」
蘭ちゃんも言葉に詰まってしまったようで、沈黙が落ちる。でもすぐに蘭ちゃんは顔を上げた。
「何かあったら言ってくださいね!話を聞くことはできるので!」
『……うん。ありがとう』
「じゃあ……あ、もうこんな時間。コナン君だけでも連れて帰らないと」
『じゃあ、その病室まで案内するわ』
そして、先程事件のあった部屋に辿り着いたものの、まだ事件は解決していないらしい。
「コラ!何してるのよ、もぉー!捜しちゃったじゃない!」
蘭ちゃんはコナン君の服を掴みながら言った。
「ダメだって言ったでしょ?うろちょろしちゃ……」
「だって……」
話し始めた蘭ちゃん達から視線を外すと……そこには顔色を変えたバーボンがいた。
『ちょっとどうしたの?』
声をかけるが反応がない。
「おい、どーした?」
毛利小五郎がバーボンの肩を掴んだことで我に返ったようだが……先程のアダ名の事といい、今日のバーボンはなんか変だ。