第82章 子供の頃のアダ名
「何でゼロ?確か名前"透"だったよな?」
「透けてるって事は何もないって事。だからゼロ……子供がつけるアダ名の法則なんて、そんなモンですよ……」
アダ名というものに縁がなかったから、法則とかはよくわからない。コナン君や蘭ちゃん達も名前呼びだし……つくづく自分は普通でないんだと感じてしまう。
楠田の情報は入らないと思ったのか、毛利小五郎と出口の方へ向かう。
「へぇー、毛利先生の奥さん、急性虫垂炎だったんですか……」
「ああ……焦って損したぜ」
「でも盲腸だからってあなどると危ないらしいですよ……」
『本当によかったですね……にしても、焦ったなんて奥様のことちゃんと思ってらっしゃるんですね』
「バッ……いや、まぁ……そのなんだ……」
照れくさそうに頭を搔く様子に表情は繕いながらも、気持ちは浮かなかった。
一度きりではあるけど愛してると言ってもらえた。離さない、とか……でも、何か違うのかもしれない。照れながらもちゃんと大切であることはわかるし、だからこそ何となく虚しくなる。
「「「きゃあああ!!」」」
ものすごい悲鳴に振り返った。迷ったがバーボンについて行くことにした。
「今の悲鳴……この部屋からだったよな?」
「あのー、どうかされましたか……っ?!」
そこには、1人の女性が床に倒れていて……友人であろう女性達がその周りと囲んでいた。
「しかし、病院で毒殺とはな……」
あの後すぐに駆けつけた警察によると、被害者女性は青酸系の毒物による窒息死だとか……バーボンは現場に入ってしまっているし、だからといって私がそこに踏み込むのも変な話だ。私は探偵ではないし。
バーボンもコナン君も……あの2人がいれば解決するのは時間の問題だろう。
現場近くをうろつく訳にも行かず、バーボンにこの場を離れることを伝えて病院内を歩き出した。
『あら、蘭ちゃん』
「亜夜さん!こんにちは!どうかされたんですか?」
『私は付き添いなの……さっき毛利さんに会って奥様が入院したって』
「ああ、手術もすぐに終わったみたいでもう元気です!」
『それならよかった』
「あの、父達見ませんでしたか?」
『それが……事件があったみたいで。現場に残ってるわ』
「ええっ!」
『おかげで私も帰れなくて……』
「……もしかして安室さんの付き添いですか?」