第81章 再調査
そう言うとバーボンは考え込んでしまった。ベルツリー急行で何かあったのだろうか?それ以外に思い当たるものはないしな……。
『とりあえず、なんでそんなことを言い出したのか聞かせてもらえるかしら?』
「……ベルツリー急行で見たんです」
『……ベルモットの変装じゃないの?』
「にしてはタチが悪いんですよ」
そうしてバーボンが話し始めたのは、ベルツリー急行での計画。シェリーを貨物車に追い込み、爆弾を使って連結部分を破壊する。切り離された貨物車が止まり次第シェリーを回収……といった予定だったらしいのだが。
貨物車の中は爆弾だらけ。おそらく、ベルモットが確実にシェリーを消すために独断でそうしたのではないかということ。死なせる訳にもいかず、仕方なく一緒に連れ出そうとしたが、シェリーは貨物車に閉じこもってしまった。
それを追おうとしたのだが、誰かが入ってきて……手榴弾が投げ込まれた。それによって連結部分は破壊され、数秒後貨物車も爆破されたと。
……バーボンの前に立ったシェリーが本人でないことはわかっているが、ならば誰が?あの少年と関わりのある人間だろうし、だからといって身代わりに死なせるような真似をするか?そんな閉じ込められた場所から逃げ出すなんて……
―あーあ、ガッカリよ……これでキッド様来られなくなっちゃったしぃ……。
不意に園子ちゃんの言葉を思い出した。バーボンの前に立ったシェリーが怪盗キッドの変装であった可能性はある。怪盗キッドとあの少年の繋がり……に関して考えるのは今ではないか。
「……聞いてますか?」
『えっ……ああ、ごめん。えっと、その手榴弾を投げ込んで来た男が赤井だってこと?』
「……ええ。おそらく」
『だとしたらとんだ馬鹿ね。死んだと思わせられているのにわざわざ、しかも貴方の目の前に姿を現すなんて』
「信じてませんね?」
『信じて欲しいならそれだけの情報出しなさい』
「……」
もう既に赤井の周囲にいた人間に探りは入れたはず。一度諦めたかと思ったが……かえって火がついてしまったようだ。
「それなりの情報を提示したら協力してくれますか?」
『……』
怒りたい訳ではない。でも、自分の中の細い糸がプツンと切れた気がした。
スっと立ち上がってバーボンの前に立つ。
そして、間髪入れずに繰り出した拳。
「っ……!」