第81章 再調査
パッと目が覚めた。外は暗くなっている。どうやら気付かぬうちに眠っていたらしい。時計を見る限り……3時間程度か。いくらか頭もスッキリした。スマホを取って指示が来ているか確認する。
『ん……?』
任務関連のものは何も無かったが、一件メールが。差出人はバーボンで。
《話があります。1時間後に伺います》
送られて来ていたのは……えっ、1時間前?なぜ居場所を知っているのかは……聞かない方がよさそうだ。
ピンポーン
どうしようかと悩む間もなく鳴らされたベル。出るべきか?いや、息を殺していれば諦めるかもしれないし……という考えは見透かされていたのか。急に鳴り出した着信音は、私が今ここにいることを教えてしまった。渋々と通話ボタンを押す。
「やっぱりいるじゃないですか」
『……何の用?電話で済むなら今終わらせて』
「さすがに人の往来がある廊下で話せることではありませんよ」
『……』
「なので開けてください」
『……チッ』
一応ドアスコープを覗いて、そこにいるのがバーボンであることを確認しドアを開けた。
「すみません、おやすみ中でしたか?」
『……ちょっと前に起きたところよ』
ペットボトルの水を口に含んで、ゆっくり飲み込む。そっと息をついてバーボンを見ると、その口元が笑みを浮かべた。
「思っていたより普通ですね」
『は?』
「もっと取り乱しているものだとばかり思っていたので。部屋に入った時点で組み伏せられるかと警戒していたんですが」
『っ……』
寝起きで気が抜けていたのか……そうだ、シェリーは表向きはもう死んでいるんだ。バーボンは明美が死んだ時にずっとそばにいてくれたんだから、シェリーが死んだのに平然としているのは不自然に見えるだろう。
『……実感がないだけよ』
「……そうですか」
『さっさと要件済ませて帰って』
椅子に腰掛けてバーボンを睨み上げる。バーボンは目を閉じ、次に開かれたその目には執念が宿っているように見えた。
「ベルツリー急行で、赤井秀一を見ませんでしたか?」
『は……?』
全く予想していなかった言葉に思考が止まる。
『ずいぶん変なこと聞くのね?貴方だって調べてたんでしょ?』
「本当に見ていないんですね?」
『……私が見たのはベルモットが変装していた姿だけよ。頬に火傷の跡もあったし』
「……」