第80章 漆黒の特急
反射的に振り返る。すると、もう一度爆発音が。
『な……っ』
これもベルモット達の仕業か?何があったのか確認したいが、通路側の窓からは見えない。コナン君をちらりと見たが、今は私から意識を逸らしているようだ。ならば、止められることもない。
B室のドアに手をかけて、それに気づいたコナン君の声が届く前にそれを引いた。そこには。
『あ、哀ちゃん……?』
「亜夜、さん?なんでここに?」
哀ちゃんの驚いたような声が聞こえた。ふらふらと足が部屋の中へ入っていく。外を見るなんてことは頭から抜け落ちていた。哀ちゃんの前に立つとストンと体が崩れ落ちる。
「えっ、ちょっと……!大丈夫?!」
上から哀ちゃんの声がする。
『よかったぁ……っ!』
生きてた、無事だった……先程まで抱えていた緊張感と恐怖が一気に霧散して涙腺が緩む。溢れ出した涙は頬を伝ってぽたぽたと服にシミを作っていく。
ふわりと頭に手が置かれた。視線を上げれば哀ちゃんが遠慮がちに頭を撫でてくれる。
「……心配かけてしまったみたいね」
『ほんとだよぉっ……もし何かあったらって、怖くて……っ!』
「でも、大丈夫だったでしょ?」
『ん……』
「あー、えっとさ……」
コナン君の声にハッとして、持っていたハンカチで涙を拭う。
「さっきの爆発が原因で最寄り駅に停るみたい。だから、みんなの所戻った方がいいんじゃないかな?」
「……そう」
『じゃあ行かなきゃね……』
よろよろと立ち上がって服を軽くはらう。
『哀ちゃんも……体調は平気?』
「ええ」
手を出すと、前に比べてかなり小さくなった手が伸ばされそっと握られた。でも、その手は小さく震えていた。やはり……私のことも怖いんだろうな君
「おお、しん……いや、コナン君。亜夜さんも一緒だったんじゃな」
そう言って前の車両の方から阿笠さんが歩いてきた。ここは、私より彼の方がいいだろう。
『哀ちゃんまだ体調が良くないみたいで……私といるより阿笠さんの方がいいかと思いますんで、お願いしてもいいですか?』
「おお、じゃあおぶっていくかのぉ」
阿笠さんは哀ちゃんをおぶって先に行った。残された私とコナン君の間にはまた微妙な空気が流れる。
「亜夜さんは本当に何者なの?」
『さあ……気になるなら暴いてみて。探偵さん?』