第80章 漆黒の特急
バーボンか?なぜこの列車に?一瞬目が合ったがすぐに逸らされた。何の目的があるのか教えてもらわなきゃ。そう思って追いかけようとしたのに。
「あれ?貴方も乗ってたんですね!安室さん!」
『は?』
蘭ちゃんの声に振り返った。そこにはバーボンが。えっ、じゃあさっきのは誰?
「ええ!運良くチケットを手に入れたので……さっき食堂車で毛利先生ともお会いしましたよ!」
相変わらずの笑顔に嫌気が刺す。振り返ったが、もうそこに赤井の姿はない。舌打ちしたくなったのをどうにか堪えて、代わりに手を強く握り締めた。
「それより、車内で事故があったそうですけど、何か聞いてます?」
「そ、それが殺人事件みたいで……今世良さんとコナン君が現場に残ってるんですけど……」
「ほー……それなら毛利先生にお任せした方が良さそうかな?」
ゆっくり息を吐く。さっきの赤井がバーボンの変装ではないのなら……他にそんなことをしそうな人間は1人しか思い当たらない。何を企んでるのか知らないが見つけ出して問い詰めよう……そう考えて蘭ちゃん達に声をかけようとした。
『あの……』
「ああ、そうだ。亜夜さん、この前頼まれてた件について確認したいことがあるんですが」
『……』
バーボンは微笑みながら言うが、その表情に裏があることくらいわかる。ここは合わせた方が良さそうだ。
『ええ、手短にお願いできるなら』
「え!亜夜さん、この人と知り合いなんですか?!」
『ま、まあ……』
園子ちゃんの反応に曖昧な返事を返した。これは後で何か聞かれるんだろうな……上手くかわす方法はないかな。
「という訳だから先に部屋に言っててくれる?」
「わかりました。博士達の部屋にいるので」
『うん。じゃあまた後で』
蘭ちゃん達が行くのを見送る。そちらとは反対側へバーボンと一緒に歩いていく。そして、バーボンが取ったであろう部屋に入った。
『……で?』
バーボンを睨んで聞く。何かあってもいいように椅子には座らない。
「何故この列車に?今日まで任務だと聞いていましたが?」
『……あの子達に誘われたのよ。だから急いで片付けてきた。それだけ』
「……そうですか」
『じゃあ、私からも聞かせてもらうけど……なんでこの列車に乗ってるの?』
「たまたまチケットが取れたので」
『へぇ……?』