第80章 漆黒の特急
「すっげー!」
「また推理クイズですか?」
部屋の中の真純ちゃんに向けて興奮気味の声がかけられる。でも、真純ちゃんの発した言葉によって空気は一変した。
「いや、本当に亡くなってるよ……」
「えっ?!」
「さ、殺人?!これってガチで殺人事件なの?!」
「ああ……誰かがこの人のこめかみを拳銃で撃ち抜いたんだ」
そこからコナン君と真純ちゃんがこの状況の説明をする。ドアにはチェーンロックがかかってたし、傍から見れば自殺と考えた方が良いのだろうけど……こめかみの銃創の周りには火傷のあとがないことと、その拳銃にはサイレンサーがついていてそれで自殺するのには無理がある……ということで、おそらく他殺であると。
「でもまあ、犯人はまだ確実にこの列車内に……逃しはしないさ!」
真純ちゃんがそう言ったところで微かな通知音が聞こえた。コナン君がポケットからスマホを取り出した。たぶんメールか何か来たんだろう。その表情が少しばかり険しくなった理由は気になるが。
「とりあえず、オメーらは蘭姉ちゃん達と部屋に戻ってろよ」
「えー?!僕達も何か手伝いますよ!」
「歩美も!」
「余計な事はすんな!俺が戻ってくるまで、部屋に鍵掛けて、誰が訪ねてきても絶対開けるんじゃねーぞ!」
急に声を張り上げたコナン君に視線が集まる。
「何よ、急に……」
「こえーぞお前……」
「えっ?あ、だから……ほら!殺人犯がまたうろついてるから、あぶねえだろ?」
確かにそうかもしれないけど……さっきの反応はそれだけじゃない気がした。
「じゃあ、子供達をよろしく頼むよ!」
「うん、わかった……」
「でも、一応お父さんに連絡して来てもらうね?」
そうこうしてると、騒がしいのを聞きつけたのか他の客が集まってくる。蘭ちゃんが事件が起きたことを伝えると客達から驚きの声が漏れた。
「とにかく車掌さん!すぐにこの列車を停めて、警察がくるまで部屋を出るなって客達に伝えてくれ!」
「は、はい!」
そう言って駆け出してった車掌の背を見送る。しばらくして放送が流れ始めた。子供達は慌てる様子もない……いや、哀ちゃんは怯えているのかしきりに周囲を見回している。
とりあえず部屋に……と、視線を上げたその先にいたヤツに思わず目を見開いた。頬に火傷のあとがある……赤井の姿に。