第80章 漆黒の特急
そう返したものの雰囲気は重くなった。ジトリ、と向けられる視線にどうしたものかと思考を巡らせようとしたのだが、良くか悪くかその雰囲気を壊したのは子供達だった。
「じゃあ、謎が解けたって言いに行こうぜ!」
「そうですね!」
「行こう行こう!」
元気よくおー!と声を上げる3人のおかげで視線は逸らされたし、この後毛利小五郎の解説もあるらしいし……そうして、全員で車掌の元へ向かったのはいいのだけど。
「遺体消失のトリックが解けた?ハハハ、今回の推理クイズはまだ出題されてないよ?」
なんて言われてみんなで顔を見合わせた。コナン君と園子ちゃんがカードを渡すが、どうやら予定されていたトリックとも違うらしい。
じゃあ、誰が、何のためにこんなことを?
「こうなったら8号車に行って被害者役の客に聞いてみるしかなさそうだな……」
確かに……あの男ならなにか知ってるかもしれないな。
その前にトイレへ向かった元太君と光彦君を待ちながら考える。ふと視線を感じてそちらを向けば、哀ちゃんと目が合った……が、すぐに逸らされてしまった。やっぱり、気づかれてるかもな……。
トイレに行った2人が戻ってきて、また全員で8号車へ向かう。そしてB室のドアを園子ちゃんがノックした。
「ちょっとおじさん!もうトリックバレちゃったわよ!出てきて説明してよ!」
そう呼びかけるが返事はない。
「ったく、まさかウチらの部屋で寝てるんじゃ……」
園子ちゃんがドアノブを掴んで引く。でも、チェーンロックがかけられているのか完全には開かなかった。私の立っている位置からは中は見えない。
『ん……?』
この匂い……硝煙?
「亜夜お姉さん?どうかしたの?」
「ん?なんか妙な匂いが……した気がして」
歩美ちゃんに服の裾を引かれたから目を合わせて答えた。
「おじさん!寝てないでチェーンロック外してよ!ちょっとおじさん!」
「どうしたの?」
「ソファでうたた寝してるのよ。こめかみから血を流して、まるで死んでるみたいにね……」
それを聞いてコナン君と真純ちゃんの顔色が変わった。
「どうせまた推理クイズのネタだろうけど……」
「ちょっとどいて!」
そう言ってコナン君と真純ちゃんが部屋を覗き込んで……呟く。
「硝煙の……匂い」
そして2人はドアを破って中へ入った。