第80章 漆黒の特急
「そうですね」
2人を促して前の7号車へ。
車両一つ分の移動だからすぐに7号車のB室につく。そして、その部屋のベルを押すと男が顔を覗かせた。
「あの……私達共犯者役になって、部屋を入れ替わるようにって指示があったんですけど……」
蘭ちゃんがおどおどと出てきた男に話す。
「ああ……」
そう言って男が部屋から出ていった。その様子を見送って部屋に入ろうとした時。
「あれ?何やってるんだ?ここ7号車だろ?」
「世良さん!」
そこに先程の子が。
「事情は中で話すからとにかく入って」
園子ちゃんが腕を引いて部屋に引き入れた。
「それで?君達の部屋は8号車だろ?」
「それが……私達推理クイズの共犯者役になって。ほら、これ」
蘭ちゃんが先程のカードを手渡す。
「ふーん。結構本格的なんだな」
興味深げにそのカードを眺めている。その視線が不意に私へ向けられた。
『なあに?えっと……』
「ああ、真純って呼んでくれていいから……」
『わかった。真純ちゃんね』
「……お姉さん僕とどこかであったことないか?」
「えっ、そうなんですか?」
いや、駅のホームで会ったあの時、私は素顔だった。多少の面影はあるだろうけどまともに顔を見られた覚えはない。
『ごめんなさい、覚えがないわ』
「じゃあ、なんで僕のこと真純ちゃんって呼ぶんだ?自分で言うのもなんだけどこんな格好だし、男だと思わなかったのか?」
『……蘭ちゃんと園子ちゃんには決めた相手がいるみたいだし、そんな子達が易々と男の子を部屋に誘ったり腕を引いたりはしないんじゃないかって思って』
そう言えば、2人の顔がほんのり赤くなった。
「そうか……」
一応納得はしたみたいだが、まだ若干疑いの視線が向けられる。そんな時、急にドアが前触れもなく開けられた。
「あら、コナン君。どうしたの?」
蘭ちゃんが気づいて声をかけた。
「レディの部屋に入る時はノックくらいしなさいよ!」
「あ、いや……ここって7号車だよね?」
「何言ってんだ?ここは8号車!たった今、僕が遊びに来たところさ!」
「そっか……」
そう言ってコナン君は去っていった。
「びっくりした……」
「世良さんがいなかったら気づかれてたかも……」
『どうやらあの子達が探偵役みたいね』
……先程に比べて眠気はなくなってきたかも。