第79章 お誘い
どうやら少年探偵団の子供達や阿笠博士、毛利小五郎も一緒に来るらしい。なかなか賑やかな1日になりそうだ。
その後も彼女達の学校生活のことを聞いたり……途中、手の空いた梓さんも交えて話した。以前より世間のことを気にするようにはしているけれど、まだ学生の流行はよくわからない。少し首を傾げてしまうのだが、それでも嫌な顔をせずに説明してくれる。本当にいい子達だ。
彼女達の飲み物の分を支払おうとしたがそれを止められる。楽しい時間を過ごせたし、ベルツリー急行にまで乗せてもらうのだ。そのお礼にしては安すぎるくらいだけど、少々強引に支払わせてもらった。
お土産話待ってます!と言った梓さんに手を振って、園子ちゃん達ともポアロの前で別れた。
本当に楽しみだ。でもなぁ……妙な胸騒ぎもする。残念なことにこの手の予感は外れないから、少し気を引き締めなければ。きっと大きな仕事が舞い込んで来るんだろう。
自室に戻るとジンの目の前には紙の束。それが何かを聞くために口を開こうとすれば、変装を解いてこいとのこと。仕方なくバスルームへ向かい、もう外へ出る予定もないから全身洗ってしまおう。
『……で、これは?』
「てめえの仕事だ」
紙を手に取ってパラパラとめくる。先程の予感が確信に変わっていった。
『……冗談でしょ?』
明後日から連日の任務。しかも、終了日はベルツリー急行が走る日。
『なんで私なの。この内容じゃベルモットの方が適任だと思うんだけど?』
「ベルモットは別件だ」
タバコの煙を吐き出すジンを軽く睨む。
『別件って?』
「てめえが知る必要はねえな」
それだけ言い残してジンは部屋を出ていった。
どうしよう……睡眠を限界まで削るのは決定事項だ。その間にできることもあるのだが。規模の大きいパーティが開催されるようで、それにも出席しないといけない。
もっと割り振ればいいのに、全部私に投げてきた。適任がいないのかもしれないけど、いくらか不自然だ。
ギリギリまで段取りを組んで、事前確認もしっかり。余計なことはしないで、でも与えられた任務は確実にこなさなければ。ヘルプで末端は……かえって邪魔だな。1人でやるしかない。
『ふぅ……』
とりあえず……この件を完遂させて、あの子達との列車の旅を楽しみたい。そう意気込んでパソコンを立ち上げた。