第79章 お誘い
頭がぼーっとする。当たり前と言えばそうなのだが。
与えられた任務をかたっぱしから片付けていく。のんびり寝てる暇なんてないから、少し横にはなるものの1時間以内には目を覚ますようにした。そして、コーヒーだったり目の覚めるドリンクを飲んで、栄養補助食品でお腹を満たす。徹夜は何度もしているが慣れるものではないし、今回に関してはやることが多すぎて疲労も溜まっていく。
アジトには帰っていない。その時間も惜しいから。それでも拠点がないと不便だし適当なホテルを転々としてる。寝るためではなく、情報整理とシャワーを浴びるためだ。ジンに会ったら……そのまま流されてしまう気がするのも帰らない理由の1つではあるけども。
だから、今はジンとは連絡を取っていない。ジンには全て終わったら報告するつもり。このハイペースで仕事を片付けていたら不審がられるに決まってる。幸い大きな取引はないから手に入れた情報をパソコンでまとめていった。
このペースなら、確実に終わらせられる。
一区切りついたところでパソコンを1度閉じる。プライベート用のスマホには蘭ちゃんと園子ちゃんからのメールが。見たいが体にムチを打ってシャワーを浴びる。鏡にうつる顔は……なんというか酷い顔だ。クマも濃いし顔色も悪い。
メイクで隠せるか?それにも時間をかけないとな……。
『はぁ……』
誘われたからと言って無理に行く必要がないのはわかってる。用事が入ったと言えば、彼女達はわかってくれるだろう。それでも、そうしない。ここまで無理をして当日行こうとするのは……単純に面白そうだというのもあるけど、何か起きる気がするから。
私の知らないところで何かが動いてる。ここまで詰め込まれた任務も私の足止めにしか思えない。眠いからまともに思考が動いていないのもあるだろうが、それでも引っかかる。
もし、何かあるとして私を止めようとする理由は何か。
『志保……だよなぁ……』
志保……シェリーの情報がどこかから入ってしまったのかも。どこから?いつ?理由……を考えたいけど駄目だ、少し寝ないと。
シャワーを浴び終えてバスローブを羽織ってベッドに転がる。スマホのアラームを5分刻みでかけて、そのまま寝入ってしまわないようにしてから目を閉じた。
もしかしたら、ベルツリー急行に組織の誰かが乗ってくるかも……なんて浮かびかけた思考は数秒で落ちていった。