第78章 甘い※
その後も何度もイかされた。激しいけれど荒々しさはなくて、終始快感と心地良さを感じた。
身体を撫でる手は優しいし、落とされる唇もそこから更に快感が広がるような感じがした。身体はぐったりとだるいけれど、意識はまだ残ってる。まあ、身体中のキスマークに関してはいつも通り。
セックスが終わってベッドに寝転ぶとジンに抱き寄せられて後ろから腕が回された。背中に感じる体温に眠気がやってくる。
「……お前はどっちがいい」
『ん……何が……?』
ふいに投げかけられた問いにぼんやりとしたまま返事を返す。
「今日みてえなのと、いつも通りなのと」
『ん……?』
眠い頭の思考の動きはだいぶ遅い。それでも、おそらくジンが聞いてるのは抱き方の話だろうと結論付けた。
『どっちもかな……ジンが抱いてくれるなら、どんなのでも嬉しい……』
今日みたいに優しいのは大事にされてるんだって思えるし、荒々しいのはそれだけ感情をぶつけてくれてるんだと思う。本心はどうなのかわからないけど、それでも嬉しい。
「……そうか」
『うん……』
納得したのかそう返事があった。そして、回された腕に少し力が込められる。眠気に抗うのもそろそろ限界だ。
「……絶対離れるなよ」
『ん……ジンが必要としてくれるなら、そばにいる』
そう言って目を閉じれば意識はゆっくりと落ちていった。
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翌朝。覚えのある若干の息苦しさに目を開ければ、目の前にジンの顔があってちょっと驚く。ジンを起こさないように身体をよじってみるが、腕の締め付けは緩まない。
小さくため息をついた。きっと急ぎの仕事もなさそうだし、起きるまでこのままでいいか。にしても……本当に何度見ても好きだなぁって思う。もちろん、ジンのことが好きなのは顔だけが理由ではないが、それでも……。
『……』
ジンが私に向けてくれる感情は、きっと他の人には向けられることのないものだ。自惚れ……じゃないと思う。少なからずジンの中で特別な立ち位置にいるのだろうとは思うけど……私が裏切るようなことをしているとジンが知ったら?約束した通り、ジンが私を殺してくれるだろうか?
その瞬間までは、この状況に甘えていてもいいのだろうか。
ごめんね、ジン。本当に大好きだよ。そんな気持ちを込めてその唇にキスを落とす。そして、もう一度目を閉じて寝入ることにした。