第77章 ただの知り合い
否定しようとした私の言葉に被せるようにして、コナン君の言葉を肯定した。思わず睨むけど、相変わらずニコニコと……本当にムカつく。
「でも、友達って感じじゃないよね?どんな関係なの?」
なんでそんなことを聞きたがるんだよ……探偵の性なのか?なんとかして、と視線で訴える。
『ただの知り合い……』
「以前、彼女が困っていたところを助けたことがあって……それ以降何回か食事に行ったりしてますよ」
「えっ、一緒にご飯行くなんて……もしかして付き合ってたりするんですか?」
心做しか蘭ちゃんの目がキラキラしてるような気がする。
『そんなわけないよ。私の好みじゃないわ』
「何度も口説いてるんですけど……なかなかなびいてくれなくて」
『あはは、おかしなこと言うんですね……あ、むろさん?』
「そんな他人行儀な呼び方しないでくださいよ。いつも通り、透って呼んでいいんですよ、亜夜?」
堪えきれずに頭を抱えた。本当に何を考えてるんだ……次組織の方で会ったら覚えとけ。
「おい、安室。あんまり亜夜ちゃんのこと困らせるな」
「すみません、意中の相手だとつい」
バーボンは照れたように頭を搔く。その姿を視界から追い出してアイスコーヒーを飲む。
「安室さんのこと興味ないんですか?」
蘭ちゃんがそう聞いてくる。
『……まあ。他に好きな人いるし』
「えっ!」
『もう……私の話聞きたいなら、蘭ちゃんも新一君とのこと教えて?』
蘭ちゃんにだけ聞こえるようにコソッと言うと、一瞬で顔が真っ赤になる。
『……何かあったの?』
「いっ、いや、あ……その……」
手をブンブンと振って否定されるが……間違いなく何かあったな。
『あ、そういえば……コナン君、イギリスに行ったの?』
「え?なんで知ってるの?」
『ウインブルドン、たまたま見てて……そしたらコナン君が映るからびっくりしちゃった。かっこいいわね、Holmes' apprentice だっけ?』
コナン君の頬もぽっと赤くなる。照れてるのかな……その様子は本当に子供っぽいのに、中身は高校生だもんな。
「私もお父さんも一緒に行ったんです。まさか事件に巻き込まれるとは思わなかったですけど……」
『でも、楽しめたみたいね。いいこともあったみたいたし』
「う……はい……」
ああ、本当に可愛い。