第77章 ただの知り合い
今の私はものすごく気分がいい。やっと、やっと……!ポアロに行けるのだ。
ベルモットに会った日にそう決めたものの、そこから立て続けに任務があった。これが終わったら……なんて淡い期待を易々と打ち砕くように追加されてく任務。それが昨日やっと終わり、朝からちょっと浮かれた気分で変装をして着替えを済ませ……今、ポアロへ向かっている。今日は休日だし、この時間でも蘭ちゃん達いるかもなんて期待もしながら。
ポアロのドアに手をかけて押し開ける。心地よいベルの音。
「いらっしゃい、ませ」
『こんに……ちは……?』
梓さんの声ではないが……聞こえてきた声にどうも覚えがある。視線を上げた先にいたヤツに思わずめを見開いた。
……ふぅ、疲れてるのかもしれない。こんなところにバーボンがいるわけがない。どうにか笑みを浮かべて引き返そうとしたのだが。
「あ!亜夜さん!こんにちは!」
「おお!亜夜ちゃんじゃねえか、久しぶりだな!」
まあ、皆さんお揃いで……どちらにせよ引き返せなくなった。あんなに会いたかったはずなのに、さっきまでの浮かれ気分はどこかへ行ってしまった。
「よかったら一緒にどうですか?」
『……え、ええ、もちろん』
断ることもできず、バーボンを軽く睨んでから空いていた毛利小五郎の横に座った。他人のフリをしろという意味を込めて。
「お水です。決まったら呼んでくださいね」
『……どうも』
いつも以上に胡散臭い笑みを浮かべたその顔、この場所じゃなかったら殴ってる。なんの目的があってここにいるんだ?私の癒しの場所が……。
『……アイスコーヒーで』
「かしこまりました」
できることなら頭を抱えて叫び出したい。私が何をしたって言うんだ。
「お待たせしました」
『……どうも』
目の前に置かれたアイスコーヒー。気持ちを落ち着けるために一口口に含む。うん、いつも通りの味だ。
「ところで毛利先生」
『……先生?』
反応してしまった。毛利小五郎の視線を感じる。
「ああ、今日から俺の弟子になった安室君だ!」
『……そう、なんですね』
本当に!こいつは!何を考えてるんだ?!
「……ねえ、亜夜さんと安室さんって知り合いなの?」
コナン君の問にアイスコーヒーを吹き出しかけた。
『い、いや?別に……』
「ええ。そうですよ」