第76章 ホームズの弟子
「……誰に聞いたの」
『ジンとキールが話してるのをね。シェリーを探すためにバーボンが動き出したって。その後バーボンにも聞きに行ったわ。まあ、何も答えてくれなかったけど』
挑発するように笑いながら言うと、ベルモットは大きく舌打ちをした。やはり、私に知らせる気は全くなかったようだ。
『取引したこと忘れちゃった?』
「……」
『それとも、シェリーを狙うのを納得させられるだけの理由を話してくれる?あ、江戸川コナンと毛利蘭を消しても構わないってことかしら?』
「……あの2人には手を出さない約束のはずよ」
『その言葉、そのまま返すわ。シェリーには手を出さないって言ったわよね?』
「ボスの命令なのよ。それなら……」
『じゃあ、どうして私に教えてくれないのかしら?口止めみたいなことをしてまで』
「……」
『どうやらこちらの思いは全く伝わってないようだから、もう一度言わせてもらうけど』
赤信号で車が止まる。同時にベルモットを睨んだ。
『貴女がシェリーに手を出すなら、江戸川コナンと毛利蘭の安全は保証しない。それでもいいなら好きにすればいいわ』
信号が変わり車が動き出しても車内の張り詰めた空気は変わらない。むしろ、時間が経つにつれてどんどん悪くなっていく。ベルモットはいつもなら感情の起伏なんて感じさせないのに、今は不機嫌であることを隠そうとしない。
その原因を作っているのは間違いなく私なんだけど、一度手を出さないと言ったんだから……あの方の命令ならば、せめて情報を流すくらいはして欲しい。
でも、この状況で期待するだけ無駄だ。きっとこの先も私へ流れてくる情報はほとんどないだろう。
もう少し志保やその周囲の人間に近づき……組織の人間があの子に何かしようものなら先回りをして止める。あの子を守りきることができるなら、裏切り者として消されたって構わない。
『ねえ、どうしてバーボンに協力してるの?』
「……何よ急に」
しばらくの沈黙の後、ふと浮かんだ疑問をぶつけると一層不機嫌な声が返ってくる。
『だって貴女、死んだ人間のこといちいち調べたりしなさそうじゃない?さっきも死んだ人間のことなんてって言ったし』
「……」
『それなのにバーボンに協力してる。その様子じゃ赤井の死に疑問を持ったわけじゃなさそうだし……あ、もしかしてバーボンに弱みでも握られた?』