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【名探偵コナン】黒の天使

第73章 隠す者達


「この銀行のトイレを借りてる間にワシらは薬を買いに言ってたんじゃが……」

『じゃあまさか……』

「ええ。まだ中にいるでしょうね」

閉められたシャッターをじっと見つめる。盗聴器の音に集中していると、強盗達の声が。中にいる人達はガムテープで目と口を塞がれ手を縛られるようだ。

子供の声は聞こえないし、その場所にいる様子もない。トイレ内に隠れているなら今は安心だろうが、いつバレるかもわからない。子供なら簡単に人質に取れる。

「……大丈夫?」

『え?』

「怖い顔、してるから」

哀ちゃんがそっと手に触れた。そこで自分がものすごい力で拳を握っていたことに気づく。

「きっと大丈夫よ、彼がいるから」

彼、というのはあの少年のことだろう。確かに彼なら犯人の目的にも気づくだろう。

『そうね』

少し嬉しかった。あの少年のことを話す志保の表情が柔らかくて……少しは気を抜いて安心できる場所を見つけたのか。よかった。

しばらくして、警察の機動隊の人間が集まってくる。でも、まだ突入はしないらしい。強盗からの要求も何もないようだ。その様子を見て疑問が浮かんだ。

『ヤツら、どうやってここまで来たんだろう』

「え?」

「確かに……妙ね」

『目出し帽に拳銃。そんな格好のヤツらがいれば嫌でも人目につきます。普通であれば金を奪ってすぐに逃げられるように、逃走手段は用意するはずじゃないですか?』

「何かあるのかもしれないわね……金をせしめてまんまとあそこから脱出できる方法が」

さすが志保。頭がよく切れるのは相変わらずのようだ。しかし、先程に比べて顔色が悪い気がする。信頼しているとはいえ、心配なのだろう。

彼女の横にしゃがんで小さくなった手を取る。

『大丈夫。きっとみんな無事だから』

その大きな瞳を見つめて微笑んだ。志保は少しだけ目を見開いて……口元に笑みを浮かべた。

「……そうね」


「……こうなったら金庫ごと吹っ飛ばしてやる!」

盗聴器から聞こえてきた声に勢いよく顔をあげた。爆弾を持っているのか?その数分後、爆発音が聞こえた。それには機動隊も気づいたようだ。

それから人が大勢で動く音が。微かにビリッとテープを破る音も。バーボンならあの程度の拘束すぐに抜け出せただろうに。

しかし、それで終わりではなかったらしい。
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