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【名探偵コナン】黒の天使

第73章 隠す者達


赤井が生きてるわけないのに……小さくため息をついた。

車を降りると体温が一気に下がった。雪か……傘をさすほどではないな。駐車場の出口にある、料金の書かれた看板をチラリと見る。ふと嫌な予感がして財布を開けた。

『あー……』

手持ちじゃ足りないかも。しかも、カードが使えないときた。仕方ない、銀行でおろそう。そう思って最寄りのていと銀行へ向かって歩き始めた。

歩き始めればそれなりに温かくなってきたが、それでも手は冷たい。途中のコンビニで温かいミルクティーを買って、カイロ代わりに手を温める。

ドォン!

銃声が聞こえた。反射的に周囲を見回すが、慌てる人はいない。となれば、バーボンに仕掛けた盗聴器か。

「出入口にロックをかけてシャッターを閉めろ!」

男の怒鳴る声が聞こえる。強盗か?この辺りでそんなことが起きそうな場所は……あの銀行しかない。

ミルクティーはコートのポケットに突っ込んで、足早に銀行の入口へ向かう。自動ドアの前に立つが開かない。そこからどうにか様子をうかがおうとしたのだが。

「おや?どうかしました?」

聞き覚えのある声がして振り返った。

『あ、えっと……阿笠さんでしたっけ?』

「おお、亜夜さんだったかの?それでなにか?」

『それが、鍵が閉まってて……中の様子も変だし……』

その瞬間シャッターが降りてきて、完全に視界が遮られた。

「まさかこれって……」

下の方から聞こえてきた声に思わず目を見開いた。ゆっくり視線を向ける。

『っ……』

志保……周囲の音も耳に入ってこなくて、ただ少女に目を奪われた。言いたいことはたくさんあるのに言葉が詰まるし、何より私の今の姿で会ったことはない。下手に動けば怖がらせてしまう。

できることなら抱き締めてあげたいんだけど。

「……何?」

ずっと見ていたせいか、不思議そうに声をかけられた。

『あ、ごめんね。貴女がアイちゃん?』

「ええ……そうだけど」

『子供達に名前だけは聞いていたから……アイって愛情の愛?』

「いいえ、哀愁の哀よ」

『そう。素敵な名前ね』

そう言って微笑んだ。

盗聴器からはまたジョディ・スターリングの声が聞こえる。2人とも中にいるのか?

『……そういえば、今日は子供達と一緒ではないんですか?』

「さっき元太くんが腹の調子が悪いと言っての……」
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