第72章 紙飛行機の謎
「とにかくこの事を早く警察に!」
沖矢さんがそう言うとほぼ同時に、また蘭ちゃんの携帯が鳴る。微かに聞こえた声は、工藤新一のもの。変声機か何か持っているのだろうか……また近いうちに探りを入れよう。
そして、蘭ちゃんは米花タワーマンションへ。園子ちゃんは警察に連絡するようだ。
「……暗号説明するの大変そうだし」
「いや、通報するのは警察と面識のある君の方が適任かと」
「そうだね、私も通報したことないし……困ったら変わってあげるから。あ、蘭ちゃん!」
玄関へ向かってしまった蘭ちゃんを呼び止める。そして制服のポケットに千円札を入れた。
「え?なんでですか?」
『たぶん必要になるから。ね?』
「わ、わかりました。それじゃ通報お願いします!」
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「ああもう!なんでこんな時に限って!」
園子ちゃんの知り合いの刑事はみんな別の事件で出払ってるようだ。そのせいで説明に手間取ってる。一応蘭ちゃんにそのことはメールで伝えた。すると、数分後新一君が連絡すると返事があった。
「はぁぁぁ……」
園子ちゃんは力が抜けたようにソファへ座り込んだ。
『ごめんね、何か言えたらよかったんだけど……』
「亜夜さんは悪くないしいいんですよぉ……てか、わかってんなら最初から自分で説明しなさいよ!」
と、ここにはいない彼に向けた怒声が響いた。
「せっかくですし、お茶でも飲まれますか?」
「へ?ああ……今日は帰ります。蘭の鞄届けなきゃいけないし」
「貴女はどうされますか?」
『私もお暇します』
「そうですか。それではまたの機会に」
沖矢さんはあっさり引き下がった。そのまま挨拶をして、その家を出た。
「もしもし、蘭?鞄届けに行く……ん、一緒にいるけど?」
電話で話し始めた園子ちゃんに携帯を渡される。
『もしもし?』
「あ、亜夜さんですか?」
『ええ。よかった、解決したのね』
「はい!あの、お金ありがとうございました。おかげでお水も買えたし……」
『そう。あ、残ったのは好きに使って』
「そんなダメです!」
『いいの。蘭ちゃんも園子ちゃんも……新一君も頑張ったんだし、たいした額じゃないけど、お駄賃ってことで』
「でも……」
『気にしないで。それじゃあ』
携帯を園子ちゃんに返して、そのままそこで別れた。