第72章 紙飛行機の謎
「ほぉ……」
『痛がる様子もないし、蹴られた場所も腫れてない……だから気になって』
「あれは、驚いて思わず身を引いてしまっただけです。それがタイミング良く蘭さんの蹴りを躱したように見えたのかと」
『……そうですか』
なんだろう、この男……漂う雰囲気に息が詰まりそう。それは帰ってきた2人の足音によってかき消されたけど。
2つ目の紙飛行機はアンテナのマークを示していたようだ。どうやら、電波の届かないところにいる人からのSOSで間違いなさそう。そして、更に情報があるかもしれないからと、リビングまでおりてテレビをつけた。
造船会社社長の誘拐の件が報道されてる。そして沖矢さんいわく、この人が紙飛行機を飛ばしているのではないかと。
『……』
「亜夜さん?」
『……タイムリミットは今日、かしら』
「えっ?どういうことですか?」
『紙飛行機が飛び始めたのは一昨日でしょ?その日から監禁されてるとすれば今日で3日目。人間が飲まず食わずで生きてられるのなんてせいぜい3日が限度。だから……』
蘭ちゃんか園子ちゃんか……ヒュっと喉の鳴る音がした。
『……って、この間そんな記事を見つけて』
まずい、素が出てしまった。ちょうど新たな紙飛行機が見つかったらしく、視線はそちらへ向く。
模様が……ちゃんと丸いのもあるけど、半円の物もいくつか。そして怪しげな折り目。沖矢さんはポケットから手帳を取り出してページを破った。1つ完成させたかと思えば、また手帳のページを破る。
私も折りたいけど……折り紙なんてやったことないんだよね。
「紙飛行機って言えばさ、色々な折り方があったよね?」
園子ちゃんの言葉で沖矢さんは何か閃いたらしい。出来上がったものに黒いマジックで丸を書き、フッと口元を歪ませた。
「……イカ?」
「ええ。これを折り直すと……」
先程のニュースにあったのと同じような紙飛行機が出来上がった。
『べ……か』
「その黒丸でべ、って意味なの?」
「じゃあそれはモールス信号のBとEだったんですね!」
「いやこれは……」
アルファベットではなく和文モールス信号……なんて説明をしてくれる。私は知ってるから聞き流して……「べ」と「イカ」で米花か。
米花町内の圏外になる場所。その他色々な条件を踏まえると……
「恐らく米花タワーマンションだと」