第69章 残されたもの
「違う……ですか」
『……どうしてこんな組織に来ちゃったのか、不思議なくらい』
「それは……」
『あ、別に理由は聞かないよ。私だって過去のことは聞かれたくないし。でも……』
体に回されている腕にそっと触れると僅かに反応があった。
『もっと……えっと、警察とか?貴方は、所謂正義の側にいる方が様になる気がする』
「……」
『奪うより、守る方が似合う……』
「……ずいぶんおしゃべりですね?」
この間も同じようなこと言われたような……なんて思っていると、回されていた腕がするりと抜けて、肩を強く引かれて仰向けにさせられる。いつの間にか起き上がっていたバーボンの顔が近づいてきて唇が重なった。
少しずつ、キスは激しくなっていく。それでも思考はクリアでこのまま抱かれるのかな……なんて考えてた。ジンのことが頭をよぎったけど、慰めてくれたし今日はそれてもいいかな、なんて思ったり。
体をバーボンの手がなぞって、離された唇は首元に寄せられて……でも、首元には吐息が当たるだけで、なぞる手も服をまくろうとはしてこない。
『……バーボン?』
「寝ましょうか……すみません、やっぱりソファで寝かせてください」
『えっ、でも……』
「このままじゃ何するかわかりませんよ」
『今日はいいよ……何してくれても』
「そう言ってくれるのは嬉しいですけど、貴女がそれを望んでいるわけではないでしょう?」
『……キスしたくせに』
ムッとしながらそう言うと、そっと頭を撫でられた。
「今日はしません。いろいろあって貴女の気持ちが落ち着いてないだけです。もし、明日になってもその気でいてくれるなら、その時は誘ってください」
『……わかった』
「それじゃあ、おやすみなさい」
バーボンはベッドから抜け出して、ソファに横になった。
1人になったベッドは妙に広いし、バーボンの体温がなくなったから少しずつ冷たくなっていく気がする。それかなんとなく嫌で、ぎゅっと体を丸めて目を瞑った。
最近のいろいろなことが頭に浮かんで、消えて……何度もそれを繰り返していると、眠くなってきた。
明日、帰る前にアイリッシュがくれた鍵の部屋に行こう。この間行った部屋も一応確認のため。
それと、あの場所。町の外れにある小高い丘。アイリッシュが教えてくれた秘密の場所にも。